電気料金の上昇が止まらない。大幅な値上げや契約受付の停止に踏み切る新電力が相次いでおり、この動きは大手電力へも拡大中だ。ただし、現在の電気料金上昇は昨年来の資源価格の高騰や電力市場制度の不備などによるもので、ロシアによるウクライナ侵攻にともなう資源価格の高騰が反映されるのは、もう少し先になる。電気料金を巡る状況は今後、深刻さを増していく。

(出所:123RF)
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 「まさか地元の大手電力会社に値引きゼロの標準料金ですら契約を断られるなんて」。ある大手小売業A社の調達担当者は絶句する。

 A社は今年4月に電力契約の更新時期を迎える。そこで2月に、契約中の新電力に契約更新を打診した。ところが新電力の回答は、「電力の仕入れ価格が高騰していてこれまでの料金では提供できない。申し訳ないが契約更新は辞退する」というものだった。

 驚いた担当者は、あわてて複数の新電力に見積もりを打診するも、見積もり提案すらしてもらえない。困り果てて地元の大手電力に問い合わせたところ、値引きはおろか、Webサイトなどに金額を掲載している「標準料金」ですら契約できないと断られたのだ。

 標準料金はメーカー小売希望価格のようなもので、2000年の電力部分自由化以降、事実上の上限価格となっていた。大手電力や新電力各社はこれまで標準料金に対して値引きを提案してきた経緯がある。

 この時、大手電力の営業担当者は、「契約する電力会社が見つからないときは、一般送配電事業者が用意している最終保障供給に申し込んでください」と説明したという。

 「最終保障供給」とは、契約先の電力会社が倒産した時などに備える制度で、いわゆるセーフティーネットだ。次の電力会社が見つかるまでの期間、一般送配電事業者から標準料金の1.2倍の金額で電力供給を受けることができる。

 この状況にA社の調達担当者は困惑を隠さない。「大手電力に契約できないからセーフティーネットを利用しろと言われたことに驚愕(きょうがく)した。値上げになるだけでも稟議(りんぎ)に上げたくないのに最終保障供給を使うなんて、目も当てられない」。

 そもそも最終保障供給は、特別な状況が起きたときの暫定的なセーフティーネットだ。多くの需要家(電力の利用者)が一定期間、サービスのように使う仕組みではない。

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