英グラスゴーで2021年10月31日〜11月12日の期間、197の国・地域が参加して開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)。脱炭素に対する世界の方針が決定され、日本企業の経営にも大きく影響するにもかかわらず、日本の認識は依然低いように思える。愛知工業大学工学部客員教授の藤村俊夫氏がCOP26を分かりやすく総括する。その前編。

 COP26の議論内容は大きく3つ。1つ目は、パリ協定(COP21)が目指す目標、つまり、世界の気温上昇を「1.5℃以下に抑える」ことに向けて、各国の取り組み強化を打ち出せるか。2つ目は、パリ協定の「ルールブック」議論の中で積み残された、第6条の「市場メカニズム」のルールと第13条の「透明性の枠組み」のルール策定などの議論について結論を得ること。3つ目は先進国などから途上国に提供する「資金援助の目標」をしっかり提示できるかだ。

COP26の議長国となった英国のジョンソン首相
COP26の議長国となった英国のジョンソン首相
「COP26を気候変動の終わりの始まりにしなければならない」と宣言した。だが、火力発電用の石炭については「段階的に廃止」から「段階的削減」に表現が弱められた。(出所:UK COP26)

 果たして国連の提示する、2010年比で2030年までに二酸化炭素(CO2)45%の削減、および2050年カーボンニュートラル実現に向けて、各国がコミットできたのか。新興国への資金援助は十分なものとなるのか、脱炭素算出基準は明確になるのかなど、2016年パリ協定発効以降も解決すべき課題は依然山積みである。先進国と新興国・途上国間である程度の合意を得るには、双方が譲歩し、協調しない限り非常に厳しい状況だ。

 今回、中国とロシアは現地参加しておらず、積極的に議論しようという姿勢は見えない。岸田文雄首相は、脱石炭に踏み切っていない点で批判の矢面に立たされることを避けるため、リモート参加を予定していたが、英ボリス・ジョンソン首相から要請を受け、渋々参加したということだ。

[1]CO2削減目標

 CO2排出量ワースト1位の中国は、「2030年ピークアウト、2060年カーボンニュートラル」と、2021年4月22〜23日に行われた米国主催の気候変動サミットで表明した内容から変えていない。

 ワースト3位のインドは「カーボンニュートラル達成時期を2070年」と初めて表明するも、時期は20年も遅れ、2030年目標に関しても「2005年比GDP当たり33~35%」と、パリ協定発効時から変えていない。ワースト4位のロシアも中国と同様、「2060年カーボンニュートラル」を表明するも時期は10年遅れ、「2030年目標も1990年比25~30%減」とこちらもパリ協定発効時から変えていない。この状況では「世界の排出量を2030年に2010年比で45%削減、2050年カーボンニュートラル」という目標の達成は程遠い。

 先進国はこれら新興国に目標の見直しを迫るが、新興国は資金援助が不十分と不満を示し、合意どころか対立が深まるのみである。新興国は、「先進国は自国の排出量目標の達成と、新興国・途上国への資金援助を確実に進める責任がある」と訴える。その背景にあるのは「これまでCO2の累積排出量は2兆4000億トン(t)にも及ぶが、大半はこれまで先進国が発生してきた。にもかかわらず、資金援助も十分ではない中、先進国と同様の目標を強制するのは筋違いだろう」と彼らは考えているのだ。

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