日本卸電力取引所(JEPX)スポット市場が高騰している。10月7日に約定した8日受け渡し分の16時30分~17時のコマは、システムプライス(全国平均)が50円/kWhとなり、全国9エリアすべてで50円/kWhを付けた。例年なら低価格で推移する10月の高騰に衝撃が走っている。

 「なぜ、ここまで高騰するのか。公開情報だけでは理由が分からない」。市場関係者の間に動揺が広がっている。

 JEPXスポット市場は9月の西日本から高めで推移していた。10月に入ると北海道エリアが高騰。10月1日には2021年度としては最高値となる55円/kWhを付けた。その後も北海道は高値で推移し、これまではさほど高くなかった東日本や九州も追随。ついに全国平均で50円/kWhとなった。

10月7日に約定した8日受け渡し分は50円/kWhを付けた
10月7日に約定した8日受け渡し分は50円/kWhを付けた
(出所:日本卸電力取引所)

 毎年、10月のJEPXスポット市場は数円程度で推移する。今年は、低気温だった8月と対照的に残暑が長引き、10月に入って猛暑日となるなど季節外れの高気温となっている。

 また、今冬も需給逼迫の可能性があるとして、大手電力各社は定期点検を電力需要が比較的小さな秋に集中して実施している。

 電力・ガス取引監視等委員会は今回の高騰に関して、「高気温による需要の増加に加えて、定期点検によって供給力が減少している。供給力については発電情報公開システム(HJKS)で確認してほしい」と説明する。

公開情報だけでは高騰原因が分からない

 だが、市場関係者からは「HJKSやJEPXが公開している需給カーブの情報などからは、これほどの高騰が起きている理由が読み解けない」という声が噴出している。

 確かに供給力は低下している。特に北海道は大型火力の定期点検に加えて、北本連系線工事もある。監視委員会によると、「苫東厚真石炭火力発電所の定期点検は当初、シルバーウイーク頃に実施予定だったが、石狩湾新港発電所の事故停止が起きたことで10月にずれ込んだ。10月8日に運転再開する予定」だという。

 ただ、北海道エリアの予備率は、高値を付けたピーク時であっても10%以上と余裕がある。インバランス速報値は、JEPXスポット市場の約定価格よりも安い。つまり、北海道エリアで需給ひっ迫は起きていないとみられる。

 JEPXスポット市場の売り入札と買い入札の状況をコマごとに示した需給カーブを見ると、売り入札量に対して買い入札量が多く、売り切れが起き、買い指値で約定していることが読み取れる。

 また、売り入札量を買い入札量が上回っているのにも関わらず、約定量が売り入札量よりも少ないことから、一定量のブロック入札が行われ、約定しなかったことが推察される。

 「火力発電所の稼働を考えるとブロック入札が必要な場面がある。歯抜けでの約定では、発電所を一定出力で動かせない」(監視委員会)。ただ、「ブロック入札による売り控えがあったのではないか」という声も市場関係者からは聞こえてくる。

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