異様な市場価格の高騰に見舞われた1月分のインバランス料金が確定した。1月に公表されていた速報値に比べて月間平均で3割以上も高い。新電力はさらに資金繰りが厳しくなるおそれがある。なぜ、速報値と大きくかい離したのか。背景に市場の歪みが透ける。

 3月5日に公表された1月分のインバランス料金確報値が大きな衝撃波となって小売電気事業者を襲った。

 燃料不足に起因する1月の電力不足は、多くの小売電気事業者に不足インバランスを強いた。卸電力市場は玉切れ状態で、異常な高騰を見せた電力を買おうにも買えない事業者は少なくなかった。市場価格が高騰すれば、インバランス料金が市場価格をさらに上回る可能性を知りつつも、インバランスを出さざるを得なかった事業者も多かったと見られる。

 だが、確定したインバランス料金は事前に目安として公表される速報値を大きく上回るものだった。インバランス料金の精算を覚悟していた新電力幹部は「確報値が速報値からブレることはしばしばあるが、よりによってこの局面で高値側にこれほど大きくブレるとは。ショックは大きい」と戸惑いを隠さない。

1月のインバランス収支は2300億円

 1月は夜間を含めた全時間帯のシステムプライス平均が63円/kWhと異例の高値だった。これに対してインバランス料金速報値(スポット・時間前平均価格×α速報値)は1月平均で59.2円/kWh。しかし、3月に公表された確報値の1月平均は77.6円/kWhと、速報値に比べて3割以上も高くなった。

 不足インバランスを精算する事業者から見れば、ただでも高額なインバランス料金がさらに跳ね上がったように見えるだろう。速報値を基に資金繰りの算段をしていた事業者には痛手だ。これほど高値側に大きくブレた要因は不明だが、多くの時間帯で速報値時点より実際の不足インバランス量が多かったということになる。

 はたして、小売電気事業者などの負担はどれほどになるのか。

 確報値と合わせて一般送配電事業者が公表したエリアごとのインバランス量から算定した全国10エリア全体の1月のインバランス収支(不足インバランスによる収入から余剰インバランスによる支出を差し引いた金額)は2309億円にのぼる(沖縄を除く9エリア全体では2299億円)(*)。

*エリアごとに定められる需給調整コストβ値、およびインバランス抑制インセンティブ定数K・Lは考慮していない。

 今回の高騰は2020年12月後半から始まり、年末にかけて高値が頻出した。この時点から市場からの調達が困難になり、不足インバランスを出さざるを得なかった小売電気事業者が増えていったと見られる。それでも10エリア全体で12月の1カ月分のインバランス収支は93億7600万円だったから、1月の不足インバランスの規模がいかに大きいものかが分かる。

 ここで算出した1月のインバランス収支2300億円は、あくまで一般送配電事業者から見たときの収支だ。全エリアの小売電気事業者と発電事業者が時間帯(30分コマ)ごとに出した不足インバランスと余剰インバランスを相殺して1カ月分に丸めた数値でしかない。高騰時に余剰インバランスなどが出るはずもない個々の新電力が負担するインバランス料金は相当な額に上るだろう。

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