12月後半から電力市場の高騰が続く。通常なら平日より安いはずの週末も、2020年最後の土日は異様な高値で終わった。高値はなぜ続くのか。背後でガス火力の「出力低下」が急増している。

 「いくら何でも、土日にここまで跳ねるのは異様というほかない」。新電力幹部は嘆息する。

 年の瀬を控えた12月26日土曜日、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場(前日市場)は西日本で深夜0時からいきなり50円/kWhを超える高値で始まり、日が沈む17時以降は全国的に23時過ぎまで70~80円/kWhの高値を付けた。

 翌27日日曜日も、やはり17時以降、20時過ぎまで全国で70~80円/kWhの高値に張り付いた。

 平日に比べて通常は需要が減る傾向にある週末に、ここまでの高騰を予期した小売電気事業者がどれほどいただろう。

 ある大手新電力は「28日月曜に行われた前日までの3日分の決済で、預託金が不足する事態になり、慌てて追加資金を振り込んだ」(大手新電力幹部)と明かす。そして、「ここまでくると、資金繰りに苦しむ新電力が出てきてもおかしくない」と話す。

 12月後半からJEPXでは高値が頻出するようになった。12月16日に西日本で50円/kWhを超える時間帯が出現し、翌17日には夕刻以降全国で50~60円/kWhを付ける事態が発生。その後も全国で高値の頻発が続いている。

 なぜ高騰が続くのか。「理由がわからない」と困惑する新電力も少なくない。

 1つは12月後半以降、全国的に気温が低めに推移したことが挙げられそうだ。「26~27日の土日も東京は比較的暖かかったものの、気温が下がった東北の電力需要は大きかった」(新電力幹部)。

世界で相次ぐLNG供給トラブル

 ただ、気温要因だけで、ここまで長期にわたって全国で高値が頻出するものだろうか。低温が続くと予測できれば、高値販売を狙って発電機を炊き増しする発電事業者が増えてきてもよさそうなものである。そうなれば、週末に80円/kWhがつくような事態にまで至ることはないのではないか。

 複数の新電力幹部が「LNG(液化天然ガス)の不足が影響している可能性がある」と指摘する。

 11月17日付け日本経済新聞電子版は「アジア市場でLNGスポット(随時契約)が1年ぶりの高値」と報じている。コロナ禍を克服した中国の生産力増強や、東アジアの厳冬を背景に中国、韓国での燃料需要が増した一方で、産ガス国である豪州において複数の生産拠点でトラブルが発生し、需給がタイトな状態にあるという。

 また、米国からアジア向けLNGの航路にあたるパナマ運河では当局が新型コロナウイルス対策を強化したことなどで船舶の通航が遅れ、現在もなおタンカーの滞船が長引いているとの報道もある。

 こうした事態が国内の発電にどのような影響を及ぼしているのか。

 発電所の稼働状況を公表している発電情報公開システム(HJKS)を見ると、12月半ば以降、「出力低下」と表示された火力発電ユニットが急増していることがわかる。

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