容量市場の初回結果は約定価格の高さから、大きな議論を呼んでいます。電力自由化や再エネの普及など、電力システムを取り巻く環境は変化しています。容量市場の本来の目的は何だったのか。エネルギー戦略研究所の山家公雄所長と、みんな電力の三宅成也・ 専務取締役事業本部長による対談・前編です。

写真上がエネルギー戦略研究所・山家氏、下がみんな電力・三宅氏。対談はオンラインで実施した
写真上がエネルギー戦略研究所・山家氏、下がみんな電力・三宅氏。対談はオンラインで実施した

――9月に公表された容量市場の初回結果を見た率直な感想から聞かせてください。

山家氏 びっくりしました。こんな約定価格になるとは夢にも思いませんでした。制度設計が間違っていたとしか言いようがありません。

 結果がすべてであり、今回の結果はどう見ても失敗です。今後、経済学の教科書に載るような事例です。マーケットは経済学の世界。なぜここまで失敗したのか、理論経済学の専門家に聞いてみたいですし、制度設計をした人たちに説明してもらいたいですね。これほどの失敗をしたにも関わらず、情報公開は圧倒的に不十分です。

三宅氏 全く同感です。容量市場の目的は将来の供給力・調整力の確保であり、その重要性は理解しています。しかし、約定価格が上限価格に貼り付くという予想外の結果は、新電力にとっては隕石のようなものです。新電力がマーケットから退出せざるを得なくなるほどのインパクトです。電力小売り自由化を推進してきた経済産業省も、容量市場がマーケットにここまでのインパクトを与えることを意図していたとは思えません。

 今回の価格は「4年後に電源が大幅に不足する」ということを意味していますが、現状の電力の需給環境が4年後に、そこまで大きく変わるでしょうか。その蓋然性が無い限り、今回の価格は説明がつきません。そもそも誰が落札したのかという情報すら、容量市場を運営する電力広域的運営推進機関は明らかにしていません。情報公開が不足しているという点は、山家さんと全く同意見です。

山家氏  海外には容量市場の実績が多数あります。日本は海外と似たような容量市場を作りましたが、そこに込められた考え方や精神は全く異なるものでした。容量市場の本来の狙いや趣旨を無視した結果が、今回の約定価格です。

 日本の今回の約定価格は、海外と比較しても、とにかく高額です。日本が制度設計のお手本にしてきた米PJMは既に17~18年、容量市場を運用していますが、これまでの約定価格をならすと4000円/kWほどです。この金額は、PJMが定める指標価格の4割程度。他方、日本の今回の約定価格は指標価格(NetCONE)の1.5倍です。なぜ、日本だけ、これほど高額になってしまったのか、説明してもらいたいですね。

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