7月に入札を実施した初めての容量市場の約定結果が公表された。1万4137円/kWという世界に例を見ない高値での約定。予想を超える負担を背負うことになった小売電気事業者は戸惑いを隠せない。いったい何が起きたのか。卸電力価格や電気料金はどうなるのか。今回の結果が電気事業にもたらす影響は甚大だ。

(出所:Adobe stock)
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 「ありえない金額」「衝撃的な結果」「受け入れがたい」・・・。あの日以降、新電力関係者がこうこぼす声を何度も聞いた。

 9月14日、7月1~7日に実施された初回容量市場(2024年度受け渡し分)の約定結果を電力広域的運営推進機関が公表した。約定価格は広域機関が2024年の需要想定などから設定した需要曲線の上限、1万4137円/kWという誰も予想していなかった高値となった。

上限価格1万4137円/kWで約定
上限価格1万4137円/kWで約定
図1●2024年度分入札の需要曲線と供給曲線(出所:電力広域的運営推進機関)

 これが異例の事態であることは明らかだ。

 「信じられない。もう一度、確認しろ」。海外の容量市場で数多くの入札実績がある外資系事業者の担当者が、本国に報告したときの反応だ。この事業者には歓喜の驚きとなったわけだが、容量市場を先行して運営している海外でもこれまで、上限価格で約定した事例は1つもない。

平均負荷率30%なら負担は3.63円/kWh

 日経エネルギーNextは国内で容量市場の導入を議論している最中の2017年11月、容量価格が米PJM並みの4000円/kW程度を付けたとしたら、総額で年間約7000億円になるという小売電気事業者の負担を概算で示した(独自試算、新市場の負担は年7000億円)。

 今回の結果はこの試算をはるかに上回り、広域機関によると、今回の約定価格から算定される2024年度の容量拠出金の総額は1兆5987億円に上る。このうち、一般送配電事業者の負担分を除く小売電気事業者分は経過措置(負担軽減策)適用後で1兆4650億円に達する。

 では、個々の小売電気事業者の負担はどれほどになるのか。

 2024年度分は落札電源のうち2010年以前に建設された電源は経過措置として受取金額は約定金額から42%減額される。小売電気事業者が負担する容量拠出金はエリアごとに経過措置対象電源の比率などを加味して計算されるが、全国平均では落札電源の78%が今回は経過措置対象だった。それを踏まえると平均容量単価は9534円/kWとなる(資源エネルギー庁)。

 これに小売電気事業者が持つピーク時の総需要(kW)をかけた金額が年間の負担額のザックリとした目安になるだろう(実際にはエリアごとに振り分けられた容量拠出金総額を各事業者の毎月のシェア変動を加味して配分)。

 需要の持ち方で小売電気事業者ごとに影響は異なるが、たとえば24時間・365日、フラットな需要(負荷率100%)に対して供給するとすれば販売電力量1kWh当たり、1.09円(9534円/kW÷8760時間)の負担増になる。

 仮に顧客(需要家)の平均負荷率が30%であれば、負担の全てを従量料金で換算すると、3.63円/kWh(9534円/kW÷0.3÷8760時間)にもなる。多くの新電力にとって容易に吸収できるような金額ではない。

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