梶山弘志経済産業大臣は3月19日、小売電気事業者各社に対して電気料金の支払い期限を1カ月猶予するよう要請した。大手電力各社は同日、対応を公表。連休明け3月23日から新電力各社も続々と対応を公表しているが、対応に苦慮する新電力は少なくない。また、要請の対象外の法人需要家の未払いリスクの増大が新電力経営の懸念材料だ。

(Adobe Stock)
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 今回の支払い期限の猶予要請は、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が3月18日に発表した「生活不安に対応するための緊急措置」を受けたものだ。この中で、個人向け緊急小口資金の特例の拡大や公共料金の支払の猶予、税金や社会保険料納付を猶予するとした。

 資源エネルギー庁は翌19日、小売電気事業者各社に対して、緊急小口資金または総合支援資金の貸付を受けており、一時的に電気料金の支払いに困難を来たしている個人需要家に対して、支払い期限を1カ月猶予するよう求めた。

 大手電力各社は3月19日中に一斉に対応を公表。新電力は連休明けの23日から対応を公表し始め、大半の新電力が支払い猶予に対応する方針だ。

 日経エネルギーNextは、小売電気事業者の会員組織である「日エネルギーNextビジネス会議」の参加企業を対象に、3月23日から緊急アンケートを実施した。回答を得た新電力20社のうち、16社が大手電力と同様、もしくは別の形で電気料金の支払い猶予を実施、もしくは検討中だと回答した。「対応しない」と回答したのは20社中1社だけで、その理由は「今回の要請の対象である個人および個人事業主への電力供給をしていないため」だった。

 多くの新電力が「この状況なので必要な措置」と受け止めているようだが、急な要請にオペレーションの現場は苦慮しているようだ。

 まず、エネ庁の要請対象である「緊急小口資金または総合支援資金の貸付を受けている人」をどうやって判別するのかという問題だ。

 「緊急小口資金を受けているかどうかの判別が難しい」「貸付証書のコピーを確認のためにもらうのは合法なのかなど法務面の判断ができない」「緊急な法務確認業務では大手電力が有利」といった意見が数多く寄せられた。「要請する側(エネ庁)から一律の指示があるべき」という声もあった。

 これに対してエネ庁電力産業・市場室は「あくまで要請なので、新電力のやりやすい方法でかまわない。証書を見せてもらうでも、電話で申し込んでいると言った人を対象にするのでも良い」という。要請時に、こうした内容まで伝えることが緊急での対応を求める時には必要だろう。

 このほか、「支払い猶予の手続きはシステムで対応できず、手作業になる。テレワークでは対応できないので、そのために出社しなければならない」という声もあった。

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