今年も3月11日を迎えました。東日本大震災の発生から丸9年が経ち、10年目を迎えます。インフラ復旧は着実に進んできました。ですが、コミュニティの再生も含めてまだ道半ばという思いを持った方は多いのだろうと推察します。

 震災から10年間の復興事業予算は31兆円。政府は10年が経過する2021年度から5年間の予算を、1兆円台半ばと大幅に減額することを決めました。

 震災後、宮城県南三陸町でリサイクルを核にしたコミュニティ事業に取り組んできたアミタホールディングスの熊野英介会長兼社長は、「復興は一歩ずつ進んでいるが、10年間の復興予算がなくなっていくことに不安を感じている人は少なくない」と言います。その一方、「コロナショックが春の兆しを加速してくれるかもしれない」とも。

(出所:Adobe Atock)
(出所:Adobe Atock)

 いま新型コロナウイルスが世界を不安に陥れています。人とモノの動きがぴたりと停まり、世界経済が混乱しています。感染拡大が収まってきたとしても、その後しばらく経済は低迷すると言われています。熊野社長はこう続けます。

 「人々は、これまでの習慣や慣例から離れ、信頼している人と濃密な時間を過ごすことを選び始めている。震災を遠い記憶から引っ張り出してほしい。あのときに必要だったのは、お金ではなくて絆だった。この価値観がコロナショックを契機に定着していくような気配を感じる」

 企業は長らく実施に踏み切れなかった時差通勤やテレワークを積極的に進め、出張や会食の取りやめも広がっています。形ばかりの働き方改革ではなく、より効率的に働くことを目指した本当の働き方改革に繋がっていきそうな雰囲気ができてきました。

 「時間ができたことで子供と過ごす時間が増えた」「気の合う仲間たちと話をする機会になった」という声は、日々大きくなっています。こうした変化は、新しい社会へと向かう契機になるのではないでしょうか。

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