「約定価格がエリア平均より安かったから大丈夫と言えるのか?」

 12月24日、今年最後の制度検討作業部会が開かれた。資源エネルギー庁は11月22日に約定処理されたベースロード(BL)市場の2019年度第3回目の取引結果を報告した。

 8月9日、9月27日と合わせて2020年度受渡分の取引はすべて終了した。約定価格は北海道エリアが12.37~12.47円/kWh、東京・東北が9.40~9.95円/kWh、西日本が8.47~8.70円/kWhだった。2018年度の平均エリアプライスは北海道15.03円、東京・東北10.68円、西日本8.88円/kWhで、いずれのエリアもBL市場価格がスポット市場の平均価格をすべての取引で下回った。

スポット価格のエリア平均は下回ったものの約定量は少ない
スポット価格のエリア平均は下回ったものの約定量は少ない
ベースロード市場の約定価格と約定量(出所:日本卸電力取引所のデータを基に編集部作成)

大手電力の供出価格は本当に適正か

 西日本はわずかに下回っただけだが、東京・東北は1円/kWh前後、北海道は2円以上安かったことになる。BL市場の意義をアピールするかのようにエネ庁が提出した資料にもエリア平均を下回ったことは明記されいる。

 冒頭の発言は委員を務める松村敏弘・東京大学教授によるものだ。BL市場の取引情報は約定価格と約定量しか公開されない。「約定しなかった売り札の中に高値入札はなかったのか。買い札が増えても、(約定価格が)エリア平均を上回ることはないのか」という松村教授の疑問への答は、この情報からは分からない。

 仮にエリア平均を上回る売り入札があったとすれば、価格競争力に乏しいベースロード電源が存在することを意味し、そもそものペースロード電源の定義が疑われる。

 作業部会を主催するエネ庁は「電力・ガス取引監視等委員会が入札の妥当性を確認した」と報告。ここで言う妥当性とは、電源供出側の大手電力に課している投入電力量と売り入札価格を指す。いずれもガイドラインが定める最低量と上限価格はクリアしていたという。

ベース電源には水力や石炭火力、原子力などが相当する
ベース電源には水力や石炭火力、原子力などが相当する
黒部ダム(出所:PIXTA)

 しかしガイドラインは、上限供出価格について、ベース電源に相当する水力発電、石炭火力発電、原子力発電などのトータルの発電平均コストと定めている。稼働していないベース電源の固定費も「実質的に負担しているコスト」と理由付け、発電平均コストに含めて良いことになっている。算定根拠がこの条件をクリアしていれば、エリア平均を上回った供出価格もガイドライン上は問題ない。

 ルールはともかく、市場を立ち上げたからには利用されなくては意味がない。BL市場の目的は競争政策の観点から、ベース電源を持たない新電力にアクセス機会を保証することだったはずだ。

 2019年の3回の取引を全エリアで足し上げた全国の約定量は合計で534.3MW。1年間の電力量に換算すると46.8億kWhだった。2018年度の新電力による常時バックアップの調達量は約100億kWhで、2019年度のBL市場の合計約定量はその47%と半分にも満たなかった。

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