台風15号による千葉県内の大規模停電が長期化している。9月9日午前5時頃、台風は千葉市付近に上陸。東京電力パワーグリッド(東電PG)管内で約93万戸が停電した。

 台風襲来から1週間が経過した9月16日午前1時時点でも、依然として約9万8000戸で停電が続いており、市民生活に甚大な影響が出ている。東日本大震災の時でさえ、東電管内で全面復旧に要した日数は9日間。今回の台風による被害規模がどれだけ大きいかが分かるだろう。

(出所:PIXTA)
(出所:PIXTA)

 混乱に拍車をかけたのが、東電PGの復旧への見通しの甘さだ。東電PGは10日に「停電は11日中に全面復旧する」という見通しを発表。だが、11日になると「全面復旧は13日以降」と修正。さらに、13日には「今後2週間以内におおむね復旧見込み」と修正した。

 東電PGは12日の会見で「当初、復旧見込みを公表した際は、被害規模の実態が把握できていなかった。想定に反省すべき点があった」と発言。倒木や設備損壊などの状況が正確に把握できていない段階で過小評価したことを認めた。

 当初から停電は長期化すると受け止めているのと、後からどんどん遅れるのでは市民の受け止め方は大きく異なるだろう。心理的な疲労感や苛立ちが強まったことは、想像に難くない。

 現場では必死の復旧作業が今も続いており、東電グループの人員のほか、全国各地の電力会社や工事会社も応援に駆けつけ約1万6000人体制で復旧に当たっているという。厳しい暑さが続くなか、現場で奮闘する方々には頭の下がる思いだ。

太陽光発電の有無が明暗分かつ

 猛暑の中、エアコンが使えない、給水ポンプが止まってしまい断水、トイレやシャワーも使えないと厳しい状況に追い込まれている方々が大勢いる。病院などは特に深刻だ。非常用バッテリーが空になり、携帯電話基地局が止まっているエリアもある。支援の手が届かないエリアからは悲痛の声が上がっている。

 一方で、ネット上に多くみられるのが、「太陽光発電に救われた」「昼間は冷蔵庫、洗濯機、扇風機を動かせスマホも充電できる」「電気自動車が役に立った」という声だ。太陽光発電の有無で停電時の不自由さに大きく差が出ている。

 というのも、ほぼすべての住宅用太陽光発電が非常時に使える「自立運転機能」を備えている。パワーコンディショナーに備えられている専用コンセントで1500W分の電気が使える。住宅建設時に太陽光発電を設置したケースなどでは、宅内にコンセントが設置されていることもある。

 昨年、北海道で発生したブラックアウト(全域停電)の際、経済産業省が自立運転機能についてツイートして認知度が高まったこともあり、今回の停電でも太陽光を設置した家庭では自立運転機能が使われているようだ。

 使い方は簡単。まず、自宅の主電源ブレーカーを落とし、太陽光発電用のブレーカーも切る。その後、自立運転機能をオンにするのが安心だ。復旧後は自立運転機能をオフにし、ブレーカーも元に戻す。

 1500Wでは、エアコンや冷蔵庫などすべての家電を動かすには不十分。だが、スマートフォンやパソコンの充電、テレビで情報を得るには十分だ。この1500Wという大きさは、パワコンメーカーに共通する仕様だ。

 住宅用太陽光は4~5kW程度の設備を載せているケースが多い。太陽光の発電量は天気によって変動するため、ある程度安定して使える量として1500W程度が適当だからだ。また、仕様を統一することで太陽光発電設備のコスト削減を進める効果もある。

 屋根が大きく10kW近くの太陽光を載せている住宅の場合、「もっと自立運転で使いたい」と考えるかもしれない。その場合は、住宅用ではなく産業用のパワコンを設置するなど選択肢がないわけではない。ただ、自立運転への切り替え時の手順が煩雑だったり、電気設備についての専門知識が必要になる場合もあり容易ではない。

 また、蓄電池も非常時の電源供給には有効な方法だ。太陽光発電が設置してあっても、太陽が出ている時しか発電しないので日没後や雨天時は電気が使えない。だが、蓄電池を併設していれば、日中に発電した電気をためておき、日没後も使える。蓄電池コストは年々低下しているので、今後さらに身近な選択肢になってくるだろう。

 一方、家庭用よりも規模が大きな事業用太陽光は停電時、残念ながらほとんど使うことができない。目の前に大規模な太陽光発電があっても、無用の長物になってしまう。

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