ソフトバンクグループが「新電力向けBPOサービス」を始めた。顧客第1号は、ふくしま新電力(福島市)だ。これに先んじて新電力向けの電源供給を開始。代理店向け料金メニューも投入した。これまで目立った動きを見せなかったソフトバンクが動き出したのはなぜか。

2016年1月に発表した「ソフトバンクでんき」は東電の代理だった
2016年1月に発表した「ソフトバンクでんき」は東電の代理だった

 「もちろん規模を求めます。ソフトバンクですから」。

 こう語るのは、ソフトバンク・エナジー事業推進本部エナジー事業統括部営業企画部部長兼アライアンス推進室室長の大角賢一氏だ。電力全面自由化から4年。ついにソフトバンクが電気事業の規模拡大に舵を切った。

 ソフトバンクはかねて電力市場で台風の目になるのではないかと期待されてきた。だが、2016年4月の全面自由化当初は、東京電力エナジーパートナー(EP)の代理という選択をした。

 「ソフトバンクでんき」というサービス総称こそ付けていたが、料金プランは東電EPの自由化メニューと同じ。ソフトバンクグループの小売電気事業者であるSBパワー(東京都港区)が自前で供給していたのは、FIT電気比率を高めた「FIT電気プラン」だけだった。

 1年後の2017年1月にサービス名称を「おうちでんき」に改め、SBパワーによる自社供給を開始。だが、一気に全国展開するのではなく、徐々にエリアを広げる慎重さを見せていた。

 同社は販売電力量ランキングで低圧6位、全体では13位にとどまる(2019年4月実績)。携帯電話事業でしのぎを削るKDDIは、低圧は東京ガスに次ぐ2位。全体ではテプコカスタマーサービス(TCS)、エネット、東京ガスに次ぐ4位と圧倒的な存在感を放っており、完全に水をあけられている状況だ。

 東電・福島第1原子力発電所事故の発生後、ソフトバンクグループの孫正義社長兼会長は再生可能エネルギーの必要性を強く訴え、私財を投じて「自然エネルギー財団」を設立。固定価格買取制度(FIT)の導入に奔走し、グループの発電事業者であるSBエナジー(東京都港区)は大規模なメガソーラーを複数手掛けている。モンゴルに大規模な風力発電所を作ったり、「アジアスーパーグリッド構想」を提唱するなど、エネルギー問題に並々ならぬ熱意を傾けてきた。

 孫氏は2000年代初頭にADSLサービス「Yahoo!BB」を投入して、ブロードバンドの世界を一気に切り拓いた立役者だ。その後は、ボーダフォン買収を通じて携帯電話事業に参入し、米アップルの「iPhone」を最も早く販売。今ではNTTグループ、KDDIに並ぶ三大事業者の一角を占める。

 ソフトバンクが通信自由化の台風の目だったからこそ、電気事業への参入後の同社の“穏やかさ”に拍子抜けした関係者は少なくない。「ソフトバンクは足元の電気事業にはさほど関心がないのだろう」。長らく業界内では、そうささやかれてきた。

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