日本ヒューレット・パッカードは、HCI(Hyper Converged Infrastructure)製品「HPE SimpliVity 380」を発売した(リリース)。HPE SimpliVityは日本ヒューレット・パッカードの親会社である米Hewlett Packard Enterprise社が2017年1月に買収した米SimpliVity社のHCI製品。SimpliVity社は米Nutanix社と並んで、HCI分野の代表的企業の1つとして知られていた。

 HCIとは、複数のサーバーが持つストレージやプロセッサーの能力を共有して、仮想マシンから必要に応じて呼び出す基盤のこと。クラウドのIaaS(Infrastructure as a Service)と同等の環境を企業内のプライベート環境(オンプレミス)に実現する。Nutanix社の製品では、専用ソフトウエアを複数の汎用サーバーで稼働させてHCIを構築する(関連記事「『競合HCIとは目指すところが違う』、Nutanix技術責任者」)。これに対して、HPE SimpliVityは専用ソフトウエアに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)アクセラレーターを搭載した専用のサーバー機を使用することが特徴となる。

HPE SimpliVity 380が搭載するFPGAアクセラレーター
HPE SimpliVity 380が搭載するFPGAアクセラレーター
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 HPE SimpliVityでは重複排除やデータ圧縮などの処理をFPGAアクセラレーターが担当し、ストレージの消費量を平均60~70%削減できる。例えば、40Tバイトの論理容量を必要とするデータで消費する物理容量は15Tバイト程度。これは「重複排除機能を備える専用ストレージ製品と同等」(日本ヒューレット・パッカード データセンター・ハイブリッド製品統括本部サーバー製品本部長の中井大士氏)という。

 重複排除では、入力データを固定長のセグメントに分割し、ハッシュ関数でそれぞれのセグメントにユニークな識別子を付ける。そのうえで、同一の識別子を持つセグメントは物理的に1カ所にしか書き込まないようにしてストレージ消費量を削減する。HPE SimpliVityではFPGAアクセラレーターが識別子の生成などの処理を担当するため、プロセッサーに負担がかからない。その分、「セグメントサイズをより細分化して、削減効果を高めている」(中井氏)。入出力(I/O)性能が鈍化することもないため、高速の入出力が必要なTier1領域にも利用できるという。

 これに対して、ソフトウエアだけで構築するHCI製品の重複排除は、セグメントサイズをHPE SimpliVityほどは小さくできないため、容量削減効果が平均30%にとどまるという。用途も、I/O性能が鈍化するため「効果が大きいVDI(仮想デスクトップ基盤)などに限定されている」(中井氏)。