登壇した山岡 雅直氏 シンポジウム主催者が撮影。
登壇した山岡 雅直氏 シンポジウム主催者が撮影。
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 日立製作所は、「DAシンポジウム2015:システムとLSIの設計技術」(情報処理学会 システムとLSIの設計技術研究会が石川県で2015年8月26日~28日に開催)において、開発を進めている非ノイマン型のイジングコンピューターに関する基調講演を行った。登壇したのは、同社の山岡 雅直氏(研究開発グループ 基礎研究センタ)である。講演タイトルは「組合せ最適化問題を効率的に解くCMOSイジングコンピュータ」だった。

 IoTは、多数のセンサーデータを収集、解析した上で、様々な社会システムを最適制御する。この際、システムの最適パラメーターを求める組み合わせ最適化問題を解く必要があり、従来のノイマン型コンピューターでは性能不十分となる場合がある。このような問題を解決するため、同社は、新概念に基づくコンピューティングの研究を進めており、その一例であるCMOSプロセスを用いたイジングチップを開発し、「ISSCC 2015」(2015年2月22日~26日)で報告している(日経テクノロジーオンライン関連記事1同関連記事2)。

自然現象に備わる収束動作を実行して一気に解を得る

 イジングコンピューターは、逐次処理を行うノイマン型コンピューターと異なり、最適化問題を自然現象(イジングモデル)にマッピングし、自然現象に備わる収束動作を実行して一気に解を得る。イジングモデルは、磁性体中に配置されたスピン(小さな棒磁石)の動作を記述するモデルである。各スピンの向き(上、下)が変わると、イジングモデルのエネルギーが変化し、エネルギーが最小になる方向にスピンの向きは変化する。

 最適化問題のイジングモデルへのマッピングでは、最適化問題のパラメーターをスピンの向きに対応させ、問題に応じてスピン間の相互作用係数を設定し、最適化問題の評価関数をイジングモデルの全エネルギーの式に対応させる。このマッピングができれば、イジングモデルの全エネルギー最小状態を自然現象に備わる収束動作によって求めることで、最適化問題を解ける。