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今回説明するのは、UXのデザインに着手する前の段階に当たる、ユーザーの調査と、それに基づいたユーザーのモデル化手法である。ユーザーのモデル化は、属性層、行為層、価値層という3つの階層で実施することが必要と説く。中でも特に重要なのが価値層でのモデル化という。ユーザーの価値の調査手法の一例として「フォトエッセイ」、価値のモデル化手法としては「KA法」を取り上げて解説する。(本誌)

 今回は、ユーザーの調査・観察から、UXデザインの基礎となる体験価値を導く方法を解説する。

 最近では、単なるアンケート調査ではなく、もっと踏み込んだ形でユーザーの行動を見極める手法が注目を集めている。ユーザーエクスペリエンス(UX)デザインの活動とは別のところからも、こうした方法論に期待する声が増えてきた。例えば、経営雑誌の『Harvard Business Review』(ダイヤモンド社)は、2014年8月号で「行動観察×ビッグデータ」という特集記事を掲載した。ユーザーの行動を注意深く観察することが、新しい製品開発には不可欠というコンセンサスが世界的に得られつつあるようだ。

 ユーザーの行動観察は、専門用語でエスノグラフィともいう。『日経情報ストラテジー』は、2009年2月号で「消費者の実態をえぐり出す マーケティング・エスノグラフィー」という特集記事を組んで、「2009年は日本におけるエスノグラフィー元年だ」と主張した。エスノグラフィとは、要するにフィールドワークのことである。2009~2010年頃から、日本でもフィールドワークに基づいた商品開発が重要だと見直されてきたわけだ。