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今回は、ユーザー体験(UX:User Experience)をデザインする各種手法を概説する。まずデザインの基本方針(ポリシー)として、体験コンセプトの確立、理想的な体験の設計、価値に基づいた機能の作り込みの三点を挙げる。このポリシーに基づき、UXコンセプトツリーやSEPIA法といったツールを使って体験コンセプトを固め、構造化シナリオやストーリーボードなどの手法で体験を設計していく。(本誌)

  製品開発にユーザーエクスペリエンス(UX)デザインを取り入れる際には、従うべき三つの方針(ポリシー)がある。

 第1に「体験コンセプトを明確に定めること」。前回説明した体験価値を、どうやって実現するかである。一つ一つのプロダクト(機器やサービス)のコンセプトよりも上位に、体験価値に基づくコンセプトを定義する。第3回で紹介したノハナの例でいうと「ママが使いたい、家族を笑顔に」が体験コンセプトであり、その下位にあるサービスのコンセプトが「フォトブックが無料でもらえる」ことである。体験コンセプトは製品開発の最初に定めるべきであり、後述する提供企業の「文脈」に沿っていること望ましい。

 第2は「ユーザーの理想的体験を先に設計すること」である。機能を詳細に検討する前にユーザーの体験を設計し、そこからブレークダウンしてプロダクトを設計していくことになる。

 そして第3に「設定した価値に沿ったインタラクション(機能の操作)を作り込むこと」。体験価値は、インタラクションの結果としてユーザーが知覚するものであり、そこには目的や手段の連鎖がある。インタラクションが、設定した体験価値に沿ったものかを繰り返し評価しながら作っていくことが大切だ。こうした手法で製品を開発できるかどうかは組織の在り方にも関係しており、本連載の最後に触れたいと思う。