画像認識カメラは後付け

 duAroは手先カメラと画像認識システムが付属したバージョンもあるが、今回はカメラなし版を導入した。当初は画像認識がなくともシステムを組めるとみていたこと、川崎重工の純正の画像認識システムが標準構成の場合と比べて1台当たり150万円ほど高く、価格面でネックとなったことなどが理由である。

 ただし、システムの構築過程で画像認識が必要と分かり、キーエンス製の画像判別センサ「IV-G500CA」を各ハンドに付加した(図7)。ハンドの位置決めは座標のみで行うが、正常に基板を把持できたか、正常にテーブルに置けたかというハンドリングの確認にカメラを用いた。ロボットが3台あるため、純正品を用いた場合、画像認識システムの費用は400万円以上となるが、機能を限定することで画像認識システムは3台合計で150万円ほどで済んだ。

図7 手先カメラは後から追加
図7 手先カメラは後から追加
キーエンスの画像判別用カメラ「IV-G500CA」を各ハンドの端部に付けた。プリント基板の有無などを検出する。
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 安全面では柵は特に設けなかったが、万全を期して各ロボットの後方にエリアセンサを設置した(図8)。人などをレーザーで検知し、近付いた場合は動作を一時停止する。

図8 後方にエリアセンサも設置
図8 後方にエリアセンサも設置
レーザースキャナ(LIDAR)型のキーエンスのSVシリーズを用いた。
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 ティーチングについては、一般的な産業用ロボットでは付属のペンダントで行うことが多いが、duAroはそうしたペンダントは付属していない。代わりに付属のAndroidタブレット上の専用アプリでティーチングを行う(図9)。大まかな動作は手先を動かすダイレクトティーチングで教示し、細かな数値ベースの調整をこのアプリ上で行った。アプリの画面の右側は左アーム(上アーム)、左側は右アーム(下アーム)の動作をそれぞれ設定するようになっている。

図9 教示はAndroidタブレット経由で実施
図9 教示はAndroidタブレット経由で実施
duAroの教示作業は通常のロボットと異なり専用ペンダントではなく、Androidタブレットのアプリ上から行う。ダイレクトティーチングにより大まかな動きを指定した後、細かい数値の調整などをこのタブレットから行う。
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今後は部品挿入の自動化も

 今後は残る人手作業である一部部品の挿入作業もロボットによる自動化を検討する。前述した風営法の規定でパチスロ機の主基板は部品の端子をプリント基板の穴に挿入する「DIP(dual inline package)」と呼ばれるタイプしか使えない。現在の電子機器では部品をプリント基板表面に載せる「表面実装(SMT)」タイプが主流で自動化装置も普及しているが、DIP型では背の高いコネクタや集合抵抗など大型部品の実装を自動化がしにくい。これをロボットで扱えるようにする。 

本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です
1)進藤、「日立がUR社の協働ロボットを炊飯器の生産に導入、安全柵なし運用で省面積化、トルク不足の盲点も」、『日経Robotics』、2017年3月号、pp.6-10.
2)長場、「吉野家が店内の食器洗浄工程に協働ロボ導入へ、同社未来創造研究所が主導したロボット導入戦略」、同上、2017年1月号、pp.3-5.
3)進藤、「自律移動し始めた双腕ロボ、工場内を自ら回り作業、日本ピストンリングが部品搬送とピッキングに導入」、同上、2016年11月号、pp.18-23.
4)長場、「資生堂が協働ロボを化粧品業界で初めて導入、双腕の協調作業で治具変えなしに数十種に対応」、同上、2017年6月号、pp.11-14.
5)進藤、「協働ロボの大手SIerが誕生、引き合いは既に十数社、ロボ先進ユーザー企業のグローリーがSI事業に参入」、同上、2017年6月号、pp.4-10.
6)進藤、「過酷な化学分析・計量作業を双腕ロボで代替、人の作業時の『動けないストレス』を軽減」、同上、2015年10月号、pp.14-18.
7)長場、「リンガーハットが店舗をミニ工場化、生餃子販売の新規事業に双腕ロボを初導入」、同上、2016年3月号、pp.20-24.
8)進藤、「パイオニアがロボット活用でカーナビ生産国内回帰、川越工場に2本アーム協調のセル生産装置」、同上、2016年10月号、pp.10-14.