渡部氏は、AIの活用は主に3つの領域に寄与すると語る。すなわち、ゲノム医療と診断治療支援、医薬品の開発である。これらの分野を中心に、「2020年の保険償還を視野に入れて、さまざまな技術が近く臨床試験を開始するだろう」と同氏は見る。その上で同氏は、3つの事例を紹介した。
一つは、国立がん研究センターが開発しているAIを活用したリアルタイム内視鏡診断支援システム(関連記事1)。次に紹介したのが、ベンチャー企業のエルピクセルが手掛ける画像診断支援システム(関連記事2、3)。これは、MRIを使って撮影した脳内画像から動脈瘤を見つけて、3次元の画像に表示するというもの。もう一つが、日立研究所が取り組む医療データを使った予兆診断だ。渡部氏はエルピクセルを例に挙げ、「こういった分野はベンチャー企業の力も重要になる」と期待を寄せた。
開発環境を整えるために
このようなAIを活用した研究開発を加速させるため、渡部氏は業界で開発ガイドラインの作成やPMDA(医薬品医療機器総合機構)の中での評価指標や審査体制の確立に向けた議論が進んでいることを紹介した。これまで日本の医療機器開発の歴史では、製品が開発されてからPMDAがどのように規制をするかという流れがあったが、AI活用に関しては、製品が出るより先にガイドラインなどを作成しようという動きがあるというわけだ。ただし、具体的な中身については、「AIが学習していく中でどう規制を作るのかがポイントだ」(渡部氏)とするにとどまった。