日立製作所と日本アキュレイが2015年9月2日に開催した「日立高精度放射線治療研修センター開所式」には、東京大学医学部附属病院 放射線治療部門長の中川恵一氏が登壇した(関連記事)。同氏は放射線医であると同時にがん医療全般のエキスパートであり、一般向けの啓蒙活動や著作でも知られる人物。「日本のがんと放射線治療」と題して、今後の日本における放射線治療の必要性について講演した。

 同氏は、高齢者にとって手術によるがん治療は負担が大きいと指摘。超高齢化社会を迎える日本では、負担の少ない放射線治療の重要性がとりわけ高いと話した。

講演する中川氏
講演する中川氏
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 まず中川氏は、現代の日本は2人に1人が生涯の間にがんになる「がん大国」であることを挙げた。がんによる死亡数は年々増え続けており、これは先進国の中では例外的だという。がん死亡の内訳として、昔はピロリ菌感染が原因となる胃がんが多かったが、現在は生活習慣による影響が大きい欧米型のがん、例えば前立腺がんや大腸がん、乳がんが増えていると説明した。

 同氏が強調したのは、日本はがん治療に果たす放射線治療の役割が相対的に低い状況にあることだ。欧米ではがん患者の5割近くが放射線治療を受けているが、日本ではこの比率は3割ほどにとどまり、7~8割は手術による治療を受けているという。