九州電力は今年5月5日の9~16時、鹿児島県種子島で、出力1MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)に対して出力抑制を指令し、実行された。これは、需給バランスの維持を目的とした再生可能エネルギーに対する出力抑制としては、日本で初めてのケースとなった。

 電力広域的運営推進機関(以下、広域機関)はこれを受け、この出力抑制の妥当性について検証し、7月22日にその結果を公表した。それによると、「出力抑制の指令は適切なものであると判断する」とし、そのように判断した理由などの資料を公開した(関連記事)。

 広域機関による出力抑制の検証は、「送配電等業務指針(第154条)」に基づくもの。出力抑制の妥当性を監視することは、一般電気事業者による安易な出力抑制を防ぐため、経済産業省の新エネルギー小委員会の場などでも度々、要望があった。種子島のケースは、出力抑制の“番人”となった広域機関にとっても、初めての「検証業務」となった。九電に対する検証は、どのような形で実施されたのだろうか。

九電幹部が広域機関を訪れて説明

 業務指針では、一般電気事業者(今回は九電)が出力抑制を行った場合、以下の項目について、広域機関に速やかに説明するとともに、これを裏付ける資料を提出しなければならない。その項目とは、(1)抑制指令を行った時点で予測した「需給状況」、(2)「下げ代確保」の具体的な内容、(3)再エネの出力抑制を行う必要性――の3点だ。

 今回の広域機関による検証では、再エネを取りまとめている九電の幹部が、都内にある広域機関の事務所を訪れ、この3点について説明するとともに、それを裏付ける資料を提出した。

 広域機関の担当者は、説明内容と提出資料について、その妥当性を判断するため、独自に調査も行い、九電との質疑応答を繰り返した。その結果、九電幹部が広域機関を訪れた機会は数回になり、九電側が二人で説明した場合もあったという。

 業務指針が求める3項目のうち、最後の「出力抑制の必要性」は、「需給状況」と「下げ代確保」で決まる面が大きい。「下げ代」とは、種子島の場合、太陽光の出力増に対応して、火力発電の出力をどこまで下げられるかを意味する。これは「火力の最低出力」で決まる。火力の最低出力が小さいほど、多くの太陽光を受け入られる。再エネの出力抑制が認められるのは、「下げ代」が不足し、火力の最低出力と太陽光の予想最大出力の合計が需要想定を超える場合となる。

 この関係を示したのが次のグラフと表だ(図1)。種子島の5月5日では、火力の最低出力が9000kW、太陽光の予想最大出力が8600kWで合計1万7600kWに対し、需要想定が1万7000kWと、600kW供給が超過することから、この分が抑制必要量となった。

図1●5月5日の需給見通しと火力(内燃力発電機)の最低出力(出所:電力広域的運営推進機関)
図1●5月5日の需給見通しと火力(内燃力発電機)の最低出力(出所:電力広域的運営推進機関)
[画像のクリックで拡大表示]