本コラムは、数々のイノベーションで広く知られる3Mグループにおいて、大久保孝俊氏が体得したイノベーション創出のためのマネジメント手法を具体的に紹介します。大久保氏は、自身で幾つものイノベーションを実現しただけでなく、マネジャーとして多くの部下のイノベーションを成功に導きました。

前回:あなたは会社を信じますか?

トップに必要な「不変な姿勢」

 この姿勢は、トップマネジメントが変わっても常に不変でなければならない。トップマネジメントの交代とともに姿勢が大きく変わっていては、たとえ現在のトップマネジメントが「自主性を尊重する」「イノベーションへの挑戦の失敗は許容する」などと発言して社員を激励しても、額面通りには受け取れないからだ。トップマネジメントが変わった途端、意気揚々と屋根に上ったはしごを外されるかもしれない。

 こうした状況では、新しいアイデアに挑戦する情熱やエネルギーが消沈し、集中力や実行力を発揮できない。次に任命されるトップマネジメントによって空手形になる可能性がある激励で、やる気は湧いてこない。それを打ち破るには、イノベーションを支援するトップマネジメントの姿勢が「絶対に変わらない」と確信してもらう必要がある。

 これこそが「会社を信じることができる」の源泉である。会社が社員から信用されるには、トップマネジメントが常に信じるにたる経営を実践しなければならない。トップマネジメントには規律が求められるのである。こうした信頼関係を基盤として、「CanBelieve」システムは構成されている(図1)。このシステムは、以下の3つの「信じることができる」が柱になっている。

  • 自主的活動は、同僚から尊敬されると信じることができる。
  • 自主的活動は、会社から評価されると信じることができる。
  • 他人の自主的活動をサポートすることは、会社から評価されると信じることができる。

 これら3つの柱を仕掛けに落とし込んだのが、図1に示した8~10である*2

*2 Can RUBシステムの仕掛けとして、Can Recognizeシステムを説明した前々回の「15%ルールで非公式な活動を活性化せよ」までに7つの仕掛けを紹介しているので、今回は通番で8番目の仕掛けからになる。