第2回の記事「『感情面の訴求』を実践する、あの企業」で紹介した通り、CXの向上において重要なポイントは3つある。すなわち、(1)感情面の訴求、(2)価値共創、(3)フィードバックの受容、である。

 今回は、このうち(3)のフィードバックの受容について掘り下げる。顧客からのフィードバックの代表例として、企業や病院における「顧客/患者満足度調査」の問題点を取り上げ、最後に成功事例を紹介したい。

顧客満足度調査が陥りがちな「罠」

 VOC(顧客からの声; Voice Of Customer)は、組織がプロダクトアウト化して顧客に求められていない商品・サービスを提供することを避け、顧客に求められる商品・サービスの創出につなげていく上で有用である。

 顧客からのフィードバックを収集する方法の一つとして、顧客満足度調査が挙げられる。VOCを収集する行為自体は重要だが、実は顧客満足度調査には注意したい落とし穴がある。

 ここで、実際の顧客満足度調査の設問を1つ取り上げてみたい。

スタッフの対応はいかがでしたか? という設問に対する回答例(筆者が作成)
スタッフの対応はいかがでしたか? という設問に対する回答例(筆者が作成)
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 よくありがちな顧客満足度調査の設問だが、この円グラフで示されている「大変満足」が70%という結果は、満足度が高いと考えて良いのだろうか?それとも、低いと取るべきなのだろうか?

 一般的な顧客満足度調査が陥りがちな罠として、以下のようなものが挙げられる。

(1) 企業側の目標が不明確
 「大変満足」が何パーセントに到達したら、または「大変満足」と「満足」を足して何パーセントに達したら基準をクリアしたことになるのか、目標値を設定せず前年度との比較でしか見ていない場合が多い。基準がなければ、結果が出ても良かったのかまずかったのかが分からない。さらには、企業がどのような商品サービスを提供したいのかが顧客満足度調査の用紙に示されていないため、的外れなフィードバックや企業が果たすべき役割以外のフィードバックを引き寄せやすく、かえってクレームにつながることもある。

(2) 満足度≠組織の実態
 満足度を問う設問は、主観を問うものであるため、顧客の主観が大きく反映される。同じレベルのサービスを受けても、ある人は「満足」と回答するし、ある人は「不満足」と回答する。また、その時の気分や状況に回答が左右されるので、回答の信頼性に影響が出てしまう。結果を元にアクションを考え実行しても満足度が向上しない企業は、負のループに陥っている可能性がある。

(3) 調査の実施自体が目的化
 企業によっては、定点観測として顧客満足度調査を実施することそのものが目的化していることがある。調査の実施担当者が幹部向けに報告するための資料作成が目的で昨年対比しか示されず、品質向上に向けて顧客にどのようなフィードバックを求め、回答を受けてどのような行動につなげるのかが示されない。