大東建託の新電力子会社、大東エナジーが電気事業から事実上の撤退を決め、顧客(需要家)の間で混乱が起きています。大東エナジーは「他の電力会社への切り替えのお願い」というレターを需要家に送付。切り替え手続き期限を約1カ月後に設定しました(路頭に迷う26万の「大東難民」を救えるか)。

 大東エナジーのように新電力事業から撤退する場合、守らなければならないルールはあるのでしょうか。顧客への対応で気をつけるべきことは。西村あさひ法律事務所の松平定之弁護士に解説していただきます。

【質問1】 大東エナジーが電気事業から事実上、撤退するに当たり、顧客である需要家が不安に感じている理由の1つが「他の電力会社に1カ月以内に手続きをする」という点です。突然の通知で、1カ月後までに手続きしろというのは乱暴な気がします。

【回答1】 小売電気事業者(新電力)が小売電気事業から撤退する場合、法的に留意する必要がある点が大きく2つあります。

 第1が、顧客との契約・約款における契約期間の拘束や途中解約の制限に反していないかどうか。そして第2は、経済産業省が定めるガイドラインなどのルールに反していないかという点です。顧客との契約に関しては後述することとして、まず経産省のガイドラインからみていきましょう。

 経産省は電力小売りの全面自由化に先立って、「電力の小売営業に関する指針」を策定しました。需要家の料金未払いや小売電気事業者の倒産などを理由に、「小売供給契約」を解除する場合に、小売電気事業者が遵守すべき「最低限のルール」を定めています。ちなみに、小売供給契約とは、新電力と需要家の間の電力販売に関する契約のことです。

 結論から言うと、ガイドラインは「小売供給契約を解除する15日程度前までに需要家に通知する」と定めています。通知から解除日までの期間(他社への契約切り替え手続きの期間)を、書面送付から3~4週間程度に設定することについては、ガイドラインとの関係では最低限のルールを満たしているといえます。