AIで医療画像診断を支援

 トップバッターは、東京大学発ベンチャーのエルピクセル。代表取締役の島原佑基氏が登壇し、AI(人工知能)を用いた医療画像診断支援システムへの取り組みを語った(関連記事2)。

エルピクセルの島原氏
エルピクセルの島原氏
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 X線CTやMRI、内視鏡などの診断技術が進化し、生み出される医療画像の量は膨れ上がっているが「読影医や病理医は大幅に不足しており、この先医療の質を保てるかどうかが危ぶまれている」と島原氏は話す。エルピクセルが手掛けるのは、こうした状況の解決に向けたAIだ。

 同社は東京大学の研究室時代の2007年から国立がん研究センターとの共同研究を進め、能動学習(アクティブラーニング)と呼ぶAIの手法を開発。医療者の知見を効果的に取り入れ、AIが効率的に医療画像を学習できるようにすることで、従来に比べて「1/100のコストで、医師と同等以上の診断精度を実現できる」(島原氏)システムを開発した。

 マウスの原発がん/転移がんを例に、専門医でも診断精度が70%にとどまる画像を、同社のシステムでは99.6%の精度で診断できたことを紹介。脳のMRI画像でも、非常に小さい脳動脈瘤の検出などに威力を発揮するという。

 現在、10施設ほどの医療機関と共同研究を進めており「アカデミアレベルではなく、実用レベルに来ている。しっかりとしたエビデンスを蓄積し、(AIの進化に伴い性能が更新されていくような)“可変型医療機器”の承認取得に挑みたい」(島原氏)。

 医師が不足する地域を含めて、世界中に平等な医療を届けるのが目標という。AIは世界中で競争が激しい技術領域だが「日本は量・質ともにそろった医療画像大国。世界最高性能のソフトウエアを日本で作り、世界へ輸出するチャンスは十分にある」とした。

実年齢から社会を解放

 続いて登壇したヘルスグリッド 代表取締役社長の部坂英夫氏は「身体年齢という指標によって、実年齢の束縛から人々を解放する」ことをうたう同社のサービスを紹介した。

ヘルスグリッドの部坂氏
ヘルスグリッドの部坂氏
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 その中核を成すのが「ボディスコア」。身体のプロポーションや筋肉量を中心に、4カテゴリー・16項目の測定によって身体の総合的な状態を評価する独自指標である(関連記事3)。ボディスコアによって生体情報を数値化し、身体年齢を算出することで「何を改善したらよいかが分かり、行動変容につながる」(部坂氏)。

 健康にかかわる身体指標としては肥満度が注目されがちだが、「若い女性などにおける痩せすぎも健康を害する」と部坂氏は話す。こうした状態も可視化できるのがボディスコアの強みだ。

 企業向けサービスの1つとして開発したのが、インセンティブ型確定拠出年金。ボディスコアを使って従業員の身体年齢を算出し、実年齢よりも若ければ会社側が確定拠出年金の掛け金を積み増しするという仕組みだ。健康を意識する職場づくりを通じて、企業の労働生産性向上につなげる。

 身体年齢は、企業の人材活用にも生かせると部坂氏は話す。「58歳という実年齢で見ると採用は厳しいかもしれないが、36歳という身体年齢で見たらどうだろう」。部坂氏自身の数字を例に、企業の採用活動のあり方を変える可能性を語った。

 ボディスコアという独自指標を強みに、新たな市場を創造する。ここに向けて、異業種との協業に力を入れていくという。