群馬大学大学院 理工学研究院 知能機械創成部門 客員教授(元 富士重工業 スバル技術研究所 プロジェクトジェネラルマネージャー)の松村修二氏
群馬大学大学院 理工学研究院 知能機械創成部門 客員教授(元 富士重工業 スバル技術研究所 プロジェクトジェネラルマネージャー)の松村修二氏
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 自動車や自動車部品には今、より一層精緻な振動・騒音対策が求められている。走行時に高い静粛性が望まれる一方で、低燃費を求めて軽量化が進んでいるからだ。この振動・騒音対策には「基本を押さえることが大切」と説くのが、「技術者塾」において「自動車の振動・騒音対策と振動現象の「本質」」(2017年11月15日)の講座を持つ、群馬大学大学院理工学研究院知能機械創成部門客員教授(元富士重工業スバル技術研究所プロジェクトジェネラルマネージャー)の松村修二氏だ。同氏に、自動車の振動・騒音対策を学ぶ理由やポイントについて聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──自動車の振動・騒音対策に関する松村先生の講座が人気です。自動車の振動・騒音対策は今、なぜ求められているのでしょうか。

松村氏:自動車の振動・騒音対策が必要な理由は3つあります。第1の理由は法規制。自動車が走っている時の車外音が規制値をオーバーすると販売することができません。第2の理由は疲労破壊です。繰り返し応力がかかることで材料は破壊します。ところが、静的な破壊とは違って、加振力や加振周波数、共振点、加振時間などの条件が入ってくるため複雑になるのです。

 そして、第3の理由が商品性。実はこれが、振動・騒音対策を必要とする最も大きな理由となります。振動・騒音は、自動車の快適性や品質感を決める重要な要素だからです。自動車の車内音は年々静かになっており、対策技術もかなり進歩しました。例えば、最も厄介なロードノイズもいろいろな対策方法が新たに分かってきました。

 振動・騒音対策を習得すれば、設計段階から振動・騒音的に本質を捉えた良いクルマや自動車部品を造り上げることができます。また、自動車部品メーカーにとっては、クルマ全体の振動・騒音現象を把握できるようになり、より優れた部品を提案することができます。

──自動車の振動・騒音対策は、今後ますます必要とされるようになるのでしょうか。

松村氏:ユーザーの要求の高まりに伴い、自動車は年々静かで快適なものが求められています。一方で、自動車は環境問題への対応がますます重要となっており、自動車メーカーは燃費向上と二酸化炭素削減の1つの手段として軽量化を加速させています。ところが、軽量化をどんどん進めていくと、そのままでは当然、振動・騒音にも悪影響を与えてしまいます。つまり、静粛性と疲労強度のせめぎ合いの中で、いかに軽量で丈夫で静かなクルマや自動車部品を造るかが、今後の課題になるのです。