BMW社のMINIクロスオーバーが、全面改良して2世代目となった。初代に比べ、車体は全長で+195mm、全幅で+30mm、全高で+45mmと、かなり大型化している。その意図は明確で、従来のスモールカーサイズからコンパクトカーサイズへ格上げする狙いがある。この大型化傾向は、15年のMINIクラブマンからはじまっている(関連記事)。

 MINIクロスオーバーの競合とみられるのは、Mercedes-Benz GLAや、VWティグアン、AUDI Q2などである。

 今回試乗したのは、クーパーDクロスオーバーのFF(前部エンジン・前輪駆動)車と、クーパーSDクロスオーバー・オール4という4輪駆動車だ。いずれも、2.0L直列4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載するが、最高出力は150PSと190PSという違いがある。日本に導入されるのは、ディーゼルターボエンジンと、遅れて入ってくるプラグインハイブリッドのみである。

廉価なクーパーDクロスオーバーは、400万円を切る価格となる。未舗装路へ入り込むようなことが稀であれば、FFで十分だろう
廉価なクーパーDクロスオーバーは、400万円を切る価格となる。未舗装路へ入り込むようなことが稀であれば、FFで十分だろう
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 運転を始めてまず感じたのは、クルマとの一体感が薄いというか、思い通りに走れていない違和感だった。タイヤがゴツゴツした接地感覚で、路面に密着していないような不安がある。パワーステアリングは、直進状態へ戻そうとする力が強く、切り込んでいったときカーブした道に滑らかに入って行けない感覚がある。

 もちろん、クルマは何か危険な状態に陥るわけではない。しかし、自分の運転操作に対する手ごたえがしっくりこないので、緊張が解けない。その結果、体のどこかに余計な力みが入るのだろう、座席の座り心地も落ち着かず、何度も運転姿勢を調節することになった。

 そういう状態が、60km/h前後の速度まで続いた。ところが、80km/hあたりへ速度を上げてみると様子が一変した。タイヤの接地感覚が増し、挙動に落ち着きが出て、乗り心地さえよくなってきたと感じる。

 ああ、なるほどと思った。イギリス郊外の一般道は、制限速度が50mile/hで、時速になおすと約80km/hになる。日本国内の一般道よりはるかに高い速度で日常的に運転されるのである。それはヨーロッパ大陸へ行っても同様で、速度無制限となるドイツのアウトバーンは特別だが、一般道も高速道路も日本の制限速度より全体的に高い。そういう道で仕上げたクルマが、そのまま日本にやってきたというわけだ。
 
 だから、低い速度域でのタイヤの上下動や振動の収束が十分に適応し切れていない。なので、落ち着かず、違和感を覚える運転感覚となっているのだろう。