EMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕がシャープの買収を決めてから2カ月が過ぎようとしている。前回のコラムでは、フォックスコン傘下のパネルメーカー台湾INNOLUX社(群創)で董事長(会長)を務めていた段行建氏が、「シャープを助けるために日本へ行く」と意気込んでいる、という話を書いた。

 ただ、この買収を巡って漏れ聞こえてくるのは、そうした友好的な話ばかりではない。前回のコラムの公開と前後するようにして、フォックスコンが日本国内でシャープの人員について3000人規模のリストラを計画しているという話が表面化した。フォックスコンの郭台銘董事長は、買収交渉の過程で、「日本の雇用は守る」と発言したとされ、これがシャープの気持ちをフォックスコンに傾けさせる大きな要因の1つになったと言われる。

 ところが、3000人削減計画を報じた『日本経済新聞』(2016年5月14日付)によると、郭董事長は5月12日、シャープの社員宛てに、「重複・無駄を省くために人員の削減はすべきだ」とする内容のメールを送った他、同日には東証に、世界で7000人削減とする資料を開示したのだという。シャープはこの資料をすぐに削除したというが、人員削減のない再建は難しいとの認識がシャープ社内や市場にも広がりつつあるようだ。

 一方で、台湾の側に目を転じてみると、シャープよりも一足早く、買収効果で新たな受注を獲得したフォックスコンの関連会社が出ている。それは、台湾General Interface Solution(GIS)社(業成)というタッチパネル業者。2016年5月25日付で複数の台湾メディアが伝えたところによると、GIS社の周賢穎総経理(社長)は同24日、シャープの「IGZO(イグゾー)」パネルの出荷拡大にフォックスコンが既に協力をし始めているとした上で、米Apple社が間もなく発表・発売するノートパソコン(PC)にシャープのIGZOが搭載され、これに伴いGIS社も何らかの受注を決めたことを示唆する発言をした。