前回、顧客との接点を維持・活用していくためには、価値創出に必要となる製品・サービスをタイムリーに提供する必要があると述べた。ただし、供給側の事情とバランスをとることも必要だ。顧客に製品やサービスを提供するリードタイムを短くすればするほど、コストはかさむ。

 従って、価値に対する価格を魅力的なものにするためには、リードタイムをやみくもに短くするのではなく、顧客にとって意味のある時間に設定するのが望ましい。ぴったりのタイミングやインパクトのあるタイミングを見つけて、そのタイミングに価値の提供を合わせ込むことが大事なのだ(図1)。

図1 顧客にとって意味のあるタイミングの選択
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図1 顧客にとって意味のあるタイミングの選択

 例えば、“今すぐ”が嬉しい価値、1週間後でも嬉しい価値、3カ月後でも嬉しい価値などを定義していく。こうした期間があれば、供給側も色々な準備ができるので、より実現可能な打ち手として機能するはずだ。

 実際の製品やサービスの提供においては、各部門が足並みを揃える必要もある。モジュールや機能の組み合わせを工夫して、全体のリードタイムの短縮を図るのだ。加えて、ビッグデータによる需要予測や装置の稼働担保も行いつつ、可能な限り在庫を持たない工夫もこらす。さらに、それぞれの部門が今、何をしているのか、稼働にどのくらいの空きがあるかなど、サプライチェーンの見える化を行っておけば、今、目の前にいる顧客に対して、どんな約束であれば果たすことができるかを瞬時に把握できるはずだ。自社のみならず、外部の設備やワーカーの空き状況を常に把握し、活用可能な状況にしておけば、より多くの顧客が満足する価値を提供できる。