米国で商売をしていこうとしている日系企業は、大手企業に限らず、中小企業やスタートアップにまで広がろうとしています。そこで問題となるのが、実務的にどうやって米国企業に食い込んでいくのかという点です。米I.T.A社 Presidentの岸岡慎一郎氏とリンカーズ専務執行役員およびLinkers International Corporation 取締役社長を務める桑島浩彰氏の対談、第3回の今回は、教科書にない、米国で取引関係を築くための基本のキを探ります。

リンカーズ 専務執行役員の桑島浩彰氏(左奥)。(写真:加藤 康)
リンカーズ 専務執行役員の桑島浩彰氏(左奥)。(写真:加藤 康)
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岸岡氏と桑島氏の対談の第1回はこちら
岸岡氏と桑島氏の対談の第2回はこちら

桑島氏: 今度は、日系企業ができていることとできていないことをお伺いします。岸岡さんとお話をしていてできていないと感じるのは、先ほどもお話に出た意志決定権限の委譲ですね。それからスピード、マインドセットなどでしょうか。

岸岡氏: 昔は“サムライ”と称したマインドを持っていましたね、メーカーも。

桑島氏: ところが今は、駐在しても3年たったら自動的に帰国するような、形式張ったものが多くなっています。これは岸岡さんも、良くないとおっしゃっていたと思います。

 最近、日本企業の米国へのリショアリングのようなことが起きていると見ているのですが、それには2つの理由があると思っています。1つは、米国に直接投資で出てくる会社の種類が変わってきていることで、その裏には米国で必要とされている産業が変わってきていることがあると思います。もう1つは、米国企業の米国回帰だけではなく、日本企業自身の米国市場の位置付けの見直しです。最近、ASEANに集中していたけどこれからは米国だという声を非常に多く聞きます。

 それを踏まえて、岸岡さんが直近で見ている日系企業のダメなところはどこだと思われますか。

岸岡氏: それを言うと、シカゴに帰れなくなっちゃいます(笑)。

編集部: 日本企業に勤めていると、上から何か言われたくないからと、守りに入っていることがあると思います。顧客から「これまでの100倍造れ」と言われて「リスクをどう取るんだと、上司が言いそうだからやめときます」となる。守りの方向に入ってしまうところが日系企業のいけないところなんじゃないかなと思ってしまうのですが、はたから見ていてどうですか。

桑島氏: 米国企業から日系企業の動き方がどう見えているのかですね。私がよく聞くのは「遅い」とか「日本人同士でばかりやりたがる」とか「英語が話せない」とか、ここ数ヶ月米国各地を回った際に様々なところで面と向かってぼろくそ言われ、「だから日本人とはやりたくない」となっていました。品質さえよければ良い,とかまったくの幻想です。でも、そういうふうに言われていることさえ伝わっていないんですよね。