近年注目される成形加工技術、MIM

 近年注目されている成形加工技術の1つに金属射出成形(Metal Injection Molding: 略称MIM)があります。MIMの製造プロセスを図1に示します。前回述べた樹脂射出成形と似たプロセスとなっています。

図1 MIMの製造プロセス
図1 MIMの製造プロセス
出所:太盛工業
[画像のクリックで拡大表示]

 MIMは材料となる金属粉末に、バインダーと呼ばれる樹脂粉末を混ぜ、加熱してバインダーを溶融させた状態で練り混ぜ、均質な粒状に整えた材料を、射出成形機で金型に入れて形状(ワーク)を造ります。ここまでは樹脂射出成形と同じですが、ここから先がMIM特有のプロセスになります。金型で成形したワークを加熱炉に入れ、脱脂という工程でバインダーを除去すると同時に、さらに温度を上昇させ焼結という工程で金属粉末を固めます。これにより製品を完成させます。

 このMIMは米国発祥の技術であり、銃火器などの複雑な形状部品の製造で昔から活用されていました。我が国でもカメラ部品、医療機器部品、IT関連(コネクターやノズルなど)、自動車関連まで広く活用されています。

 MIMは一見、ダイカストや焼結金属と似ていますが、違いがあります。

<ダイカストとの主な違い>

・ダイカストは、材料が融点の低いアルミニウム合金・マグネシウム合金などに限定されるが、MIMの場合はステンレス鋼・SKD材などの金型鋼・チタン合金・ニッケル合金・銅合金など材料のバリエーションが広い。

・ダイカストは比較的大きなワーク(=握りこぶしサイズ)が得意なのに対して、MIMは比較的小さなワーク(=指先サイズ)が得意である。

・ダイカストと比較してMIMの方が精度は1桁高い。

<焼結合金との主な違い>

・ダイカストとの違いと同様に、MIMの方が材料のバリエーションが広い。

・焼結合金は粉末をプレスして成形するのに対し、MIMは金型での射出成形であるため、より複雑な3次元形状を製造できる。

・焼結合金と比較してもMIMの方が精度は高い。