2016年10月に経済界、地方公共団体の協力を得て、東京と京都で開催される国際会議「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」(主催:文部科学省、スポーツ庁、文化庁)は、2020年、そしてその先へ向けて、世界全体の新しい成長を目指す対話の場として期待されている。

*1 「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」開催の経緯については「スポーツ版“ダボス会議”を日本で開催する意味とは」を参照

 このフォーラムは「世界経済フォーラム」と連携して開催するもので、世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーの会議も同時期に開催される予定である。両会議への参加者の強力なグローバル発信力を活用し、最先端科学技術などをテーマとして「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」と「世界経済フォーラム」とのジョイントセッションを設けるなど、投資誘致の取り組みにつなげる。

 その後の2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、その経済効果だけではなく、「オリパラ後」の日本のあるべき姿も問われることになるだろう。さまざまな価値観を受け入れつつ独自の文化を形成してきた日本が、文化芸術の持つ多様な役割を提示し、積極的に世界に貢献することで地域活力の創出や経済振興などをどのように進めていくかということである。「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム リーダー」として開催準備にあたる藤沢久美氏(シンクタンク・ソフィアバンク代表)のインタビュー第2回は、今回のフォーラムが及ぼす影響と、「オリパラ後」の日本の姿について聞いてみた。(聞き手は、上野 直彦=スポーツライター)

スポーツ・文化・ワールド・フォーラムのリーダーを務める藤沢久美氏(写真:加藤 康)
スポーツ・文化・ワールド・フォーラムのリーダーを務める藤沢久美氏(写真:加藤 康)
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――「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」(以下、ワールド・フォーラム)は、2019年のラグビーワールドカップ(W杯)、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年の関西ワールドマスターズゲームズといった日本で開催される大型国際スポーツ大会にどのような影響があるでしょうか。

藤沢 まずは世の中全体の機運が高まればと、3つ考えていることがあります。

 第1に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて考えている政策を実行するためのキックオフ・イベントなので、「こういうふうに実行していこう」と、みんなで約束する場になったらいいなと思っています。例えば、文化庁では、2020年に向けた文化プログラムとして20万件のイベントを日本各地で開催する目標を掲げています。20万件の文化プログラムを実現するにはどうしたらいいか。どんな工夫が考えられるかなどを議論します。

 スポーツでは、「Sport for Tomorrow」という国際貢献事業があります。これはオリンピック・パラリンピックの誘致のときに、安倍総理が国際オリンピック委員会総会でいわば国際公約として出したものです。開発途上国をはじめとする100カ国以上の国において、1000万人以上の人たちを対象に、日本がスポーツを通じて国際貢献をしていくことを掲げており、これに関連するテーマについても議論します。

 それ以外に、政府の日本再興戦略の一部である「改革2020」の中に掲げられているいくつかの方策についてもワークショップで議論し、政策実行の具体化を推し進めていきます。

 第2に、これから取り組むべき新たなイニシアティブなどを、ワークショップを機に生み出そうと考えています。例えば、高齢社会や再生医療の実施など、日本が世界に先んじて整備すべき課題を世界経済フォーラムとも一緒に考え、今後も引き続き、ダボス会議でそれらのテーマを議論する際に、日本が中心となってリードできるようなきっかけをつくることができたらと考えています。

 第3に、フォーラム後に「日本は面白そうだ」「世界が元気になっていきそうだ」「日本から何かが始まる」「オリンピック・パラリンピックに向けて自分も何かをやってみよう」といった、国内外のすべての人を巻き込むような機運が高まることを期待しています。