日本では、2019年のラグビーワールドカップ(W杯)、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年の関西ワールドマスターズゲームズと、大型国際スポーツ大会が3年連続で続く。こうしたスポーツ分野の盛り上がりに向けて、インバウンド需要とも連動させつつ、スポーツ、文化、ビジネスによる国際貢献や有形・無形のレガシーなどについて議論、情報発信し、国際的に機運を高めるキックオフイベントが国内で開催される。リオデジャネイロ五輪の直後となる2016年10月に京都と東京で開催される国際会議「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」(主催:文部科学省、スポーツ庁、文化庁)が、それだ。

 文部科学省を中心に、関係省庁、経済団体、地方公共団体などの協力を得ながら開催するこの国際会議では、「ダボス会議」の通称で知られる世界経済フォーラムと連携し、国際イベントや官民ワークショップ、文化イベントといった多彩な企画を用意している。

 スポーツと文化、世界と日本が、境界を越えたコラボレーションを行う場として、あるいは互いの違いや多様性を尊重しながら、調和のとれた共創を全員参加で行うことで、全く新しい仮説・価値・産業・社会・人材を生み出すイノベーティブな場ともなり、2020年、そしてその先へ向けて、世界全体の新しい成長を目指す――。世界的にも例を見ないこのプロジェクトで、民間人でありながら文部科学省参与となり、「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム リーダー」として準備にあたる藤沢久美氏(シンクタンク・ソフィアバンク代表)に、今回の国際会議について詳しく聞くことができた。(聞き手は、上野直彦=スポーツライター)

スポーツ・文化・ワールド・フォーラムのリーダーを務める藤沢久美氏(写真:加藤 康)
スポーツ・文化・ワールド・フォーラムのリーダーを務める藤沢久美氏(写真:加藤 康)
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スポーツをキッカケに日本はチャンスが広がっていく

―― 世界経済フォーラムと連携しながら「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」(以下、ワールド・フォーラム)を開催することになった経緯と趣旨を聞かせてください。

藤沢 文部科学省が世界経済フォーラムとご縁を得たのは、同フォーラムが中国で開催した「サマーダボス会議」でした。ちょうど2020年のオリンピック・パラリンピック開催地が東京に決まった翌日というタイミングで、そのニュースを聞いた世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ会長から「日本で2020年に向けた国際会議を開催してはどうか」という提案があったのです。

 日本では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの前年にラグビーワールドカップ(W杯)があり、2021年には関西ワールドマスターズゲームズが開催され、国際的なスポーツイベントが目白押しになります。スポーツをキッカケに日本はチャンスが広がっていくのではないかと思いました。

 ダボス会議のボードメンバーでもある竹中(平蔵)先生からも、「2020年は日本にとって『締め切り効果』がある。そこに向かって何かをやろうと、みんなで一丸となって取り組めるいいタイミングとなるだろう。そういうターゲットに向けて、『さぁ、これからやるぞ』というキックオフを一緒にやったら面白いんじゃないか」というお話もありました。

―― 東京でのワールド・フォーラムは特別開催なんですね。

藤沢 そうなんです。例年、サマーダボス会議は9月に開催されるのですが、今年(2016年)はG20の首脳会議が中国で開催される関係で、開催が6月に繰り上がりました。秋に中国に行こうと考えていた人たちが日本に来てもらえるかなと少し期待しています。日本は強運ですね。