コスト削減テーマがシフトする

 第1回は最新テクノロジーや法規といった環境の変化を話題にしてきたが、ここからはプロセス改革に視点を変えてみたい。国内の製造業各社では、生き残りをかけた開発・生産プロセス改革が進行している。製品コスト削減は、国内で生産する上での競争力を高めるための普遍的なテーマだ。

 以前は製品コスト削減、VEというと、製品の設計をいかにシンプル化するかが勝負であった。「目標原価の80%が開発・設計段階で決まる」とも言われ、筆者もそのように長年信じてきた。しかし、最近この様相が変化してきたのではないかと感じる。つまり、目標原価の決定要因が、開発・設計段階だけでなく、「どこで造るか」「どのように造るか」の比重が高くなってきたように感じる(図1)。

図1 部品メーカーにおけるコストの決定要因のイメージ
図1 部品メーカーにおけるコストの決定要因のイメージ
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 アセンブリメーカーの場合には、部品点数が多いので、部品点数の削減や部品形状の簡素化による改良といった、コストの削減方法を検討する余地が比較的多い。しかし、日本の屋台骨を支える自動車産業の多くは、部品メーカーである。自動車のコストを低減するためには、モジュールや部品のコストを本質的に引き下げる必要がある。

 自動車部品には、カーナビゲーションシステムやトランスミッションのように部品点数が多いものも存在するが、多くの企業は、数点~100点の部品で構成されるモジュールまたは部品を生産する製造業だ。そのような、部品点数が少ないという制約(自由度)の中で、目標コストを実現していかなければならない。

 このような理由から、目標原価を達成するために、開発・設計だけでなく、「どこで造るか」「どのように造るか」を含め、開発・生産プロセス全体での最適化を図る必要性が高まってきているわけだ。

 「どこで造るか」「どのように造るか」を決めるために、製品の真のコストはいくらなのか、どの工程でどれくらいのコストが発生しているのか、生産拠点別の工程差異はどうなっているのか、内外製はどちらが有利なのか、などの情報を収集し分析する必要がある。これらの客観的なデータに基づいて判断し、コスト削減の方策を打ち出し、効果を逐次確認していく必要がある。

 しかし、多くの企業では、これまでの部分最適的な業務プロセスにより、効果を確認する上での障害が生じている。次にそれについて説明する。