ネガワットの用語解説で解説しているように、電力会社は電力の消費量(需要)と発電量(供給)が常に一致するように需要を予測し、発電設備の出力をコントロールしている。調整機能とはシンプルに言えば、「需要と供給を一致させるために発電量(供給)を調整する機能」であり、需要の増減に合わせて、供給量を量・速さともに追従させて増減させるものである。

 2012年9月に政府が策定した『革新的エネルギー戦略』で、「再生可能エネルギー普及時の調整機能」という文言が出てくる。従来は、変動する需要家の電力消費に合わせて、調整機能の高い発電設備によって出力変動をコントロールしていた。とことが、風力や太陽光に代表される再生可能エネルギーは、天候により発電量が変動するため、変動要素として「需要家の電力消費」に「再生可能エネルギーの発電量」が加わることとなり、再生可能エネルギー普及時には、今以上に調整機能が重要になることを表している。

 調整機能の優劣は、出力の上げ下げスピード(加速力・減速力)、上げ下げの幅(最低出力~最大出力)で評価される。自動車に例えると、調整機能の高い車とは、加減速の能力が高いスポーツカーのようなものである。高速道路を80km/hで走行していても、瞬時に100km/hまで加速したり、すぐにスピードを落としたりすることができる。調整機能の高い発電所は、天候により再生可能エネルギーの出力が大幅に減少した際にすぐに出力を上げたり、再生可能エネルギーの出力が大幅に増大した際には出力を下げたりして、速やかに需給バランスを調整することができる。

 革新的エネルギー戦略においては、LNG火力発電が、「火力発電の中では比較的CO2排出量が少なく、再生可能エネルギー普及時の高い調整機能が期待される」と評価されている。出力の上げ下げスピード、上げ下げの幅において優れているのだ。

 一方、水力発電(調整池式、貯水池式および揚水式)は、出力の上げ下げスピード、特に停止から発電までのスピードの速さという観点で調整能力は高く、CO2排出が無いという利点がある一方、ダムの水が無くなってしまえば、次に水が貯まるまでは発電ができない。このため、燃料を継ぎ足せばずっと発電できる火力発電所と比べて調整機能の「持続力」という観点で劣る。この優劣を補完する形で立ち上がりが速くCO2排出が無い水力発電の調整機能と、出力の上げ下げスピードと持続力に優れたLNG火力の調整機能を組み合わせて、負荷や再生可能エネルギーの変動に追従させることになる。

 このほか、再生可能エネルギー普及時の調整機能という観点では、「再生可能エネルギーの出力を一旦蓄電池に貯蔵し、電力系統への出力変動を小さくする」「デマンドレスポンスにより、需要側を制御する」「気象予測の精度を高めて再生可能エネルギーの出力変動予測を高める」といった技術の進歩が期待されている。

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