ユーザーが照明を点けるなどして、電気の使用量が増えると、電力会社は発電所の出力を増し、その瞬間の消費量(需要)に見合った発電量(=供給量)を維持する。単位は、W(ワット)である。個人がやかんで湯を沸かすのと同じで、発電所の出力はLNG(液化天然ガス)などの燃料を多く燃焼させることなどによってその出力を増加させる。この結果、電気の供給量と需要が一致しているか否かの指標となる周波数(東日本では50Hz、西日本では60Hz)が維持される。これが、今までの電力供給の基本である。

 実際には、多数のユーザーがいて、多種多様な電気機器を使用しているので、それらの一部の使用を一時控えてもらうことができれば、需要の増分を抑制したり、需要を減少させることができる。このように、需要と供給の一致は、発電所の出力を増減させるだけでなく、需要を変化させることでも可能になる。

 スマートグリッドという概念では、情報通信技術などの活用によって無理なく柔軟に需要を減らすことで需給を一致させることも、供給の増減による需給一致とほぼ同等に位置づけられており、この場合の需要の減少分を、通常の正(+)の電力と対比する意味で、ネガ(負、「-」の意)ワット(Negative Watt)と呼ぶ。

 電力会社にしてみとる、LNGなどの燃料を焚き増すのと同じ効果が得られるのであれば、それに相当する対価を支払ってネガワットを買う選択肢も出てくる。中長期的には、新たな発電所を建設する投資を回避できる可能性もある。これをネガワット取引といい、既に米国などでは、電力を取引する市場で通常の正の電力と同様に取引されている。

発電所の出力を増すのと、需要を抑制することは等価
発電所の出力を増すのと、需要を抑制することは等価