インタフェース「USB」の次世代版。最大の特徴は,最大データ伝送速度を5Gビット/秒にまで引き上げた点である(図1)。米Intel Corp.,米Microsoft Corp.,NECなど6社の主導企業(USB 3.0 Promoter Group)のほか,大手エレクトロニクスメーカーを中心とする180社が仕様策定に携わっている。日本からも30社が策定作業に参加する。

 2008年9月には正式仕様の一歩手前に当たる暫定版「Version 0.9」が完成した。既に暫定版仕様を基に試作された送受信回路による伝送デモや,対応コネクタとケーブルも公開済みである。2008年末にも正式版が発行されることがほぼ決まった。

 USB 3.0の特徴は高速性だけにとどまらない。高速化を実現しながら広範な種類の機器で利用可能とするための工夫が,随所に盛り込まれている。こうした工夫は大別すると三つある。(1)携帯機器にも搭載可能な低消費電力化,(2)徹底した後方互換性,そして(3)各種のデータ・フロー処理手法の導入,である。

 まず(1)は,携帯電話機のような電池駆動の機器でも利用できるように,大胆な消費電力低減手法を盛り込んだ。例えば,「ポーリング」を廃止した。加えて,待機時のモードを複数用意して小刻みに待機モードを切り替えることで,消費電力の低減を図れる構成にした。

 (2)は,コネクタやケーブルの形状に工夫を盛り込むことで,既存のUSB 2.0対応機器との接続性を重視した。USB 3.0用コネクタおよびケーブルにおいて,従来のUSB 2.0用の信号線(端子)を包含することで,接続性を確保した。

 そして(3)は,マルチコア構成のマイクロプロセサでの利用などを想定し,複数データ・フローの同時処理手法の導入や,「入出力デバイスの仮想化」といった将来技術にも対応できるようにした。

図1 USB 3.0暫定版とUSB 2.0との比較
図1 USB 3.0暫定版とUSB 2.0との比較 (日経エレクトロニクス2008年10月6日号より抜粋)