複数のC(炭素)原子が蜂の巣のような形で結合し,それが円筒形状に立体を形成したもの。その構造により,単層カーボン・ナノチューブ,多層カーボン・ナノチューブに分かれる。カーボン・ナノチューブの電気特性は,Siなど半導体材料やCuなど金属材料に比べて優れている。たとえば電流密度はSiやCuの100倍前後,熱伝導率はSiやCuの10倍~20倍といった水準である(表1)。

表1 カーボン・ナノチューブとSi,Cuの特性
カーボン・ナノチューブとSi,Cuの特性
(日経エレクトロニクス2003年9月1日号より抜粋)

 こうした特性を生かして,様々な電子機器にカーボン・ナノチューブを応用する取り組みが進んでいる。たとえば燃料電池では,電極部分にカーボン・ナノチューブを使う手法の研究が進んでいる。カーボン・ナノチューブは表面積が大きく,メタノールを分解する触媒微粒子(Pt)を数多く蓄えられるためである。NECが,カーボン・ナノチューブと構造が類似している,円錐形のカーボン・ナノホーンを触媒に用いた燃料電池の開発を進めている。

 FEDパネルの光源部にカーボン・ナノチューブを用い,エミッタが放出する電子を効率よく蛍光体に照射するという技術の研究も進む。単一の光源から発せられる電子を広い面積に均一に照射でき,画面の発光ムラを抑え発光効率を高めることができる。三菱電機や米Motorola,Inc.などが,カーボン・ナノチューブを用いて発光効率をPDPパネルの数倍に高めたFEDパネルの開発に取り組んでいる。

 現時点では均質なカーボン・ナノチューブの生成といった点に課題が残るものの,将来的には,大電流のLSI内配線や高速動作のトランジスタなど,回路設計にカーボン・ナノチューブを採り入れることが見込まれている(図1)。

カーボン・ナノチューブを応用した電子部品の実用化の見込み
図1 カーボン・ナノチューブを応用した電子部品の実用化の見込み
(日経エレクトロニクス2003年9月1日号より抜粋)