電子デバイスが発生する電源雑音や,それに伴う放射電磁雑音(EMI)を抑える目的で設置するコンデンサのこと。主にLSIの電源電圧のゆらぎに伴うEMIの抑制に用いる。デカップリング・コンデンサに求められるのは,静電容量が大きいこと,幅広い周波数帯で内部インピーダンスが低いことである。バイパス・コンデンサ(パスコン)とも呼ばれる。

 LSIがEMIを発生するメカニズムについては,いくつかの説がある。例えば,LSIの動作に伴って電源端子から電荷が充放電されることを原因とする向きもある。このとき,LSIから遠い所まで電荷が行き来すると,その経路となる配線がアンテナとなり,EMIを発生させる。配線が描くループの面積が広いほど,EMIは大きくなる。デカップリング・コンデンサをLSIの近傍に配置するのは,電荷が移動する距離を可能な限り短くして,電源電流が流れる配線のループ面積を狭くするためである。

 LSIが発生するEMIには,動作クロックと同期して発生する高周波雑音や,一部の回路ブロックが過負荷になった際の電圧変動に伴う低周波雑音などがある。このため,それぞれの雑音の周波数帯に適したコンデンサを設置する必要がある。最近では,低周波帯から1GHzほどの高周波帯まで対応できるコンデンサが登場しているほか,動作周波数が1GHzを越えるLSIについてはパッケージにコンデンサを内蔵させる試みが盛んである(図)。

パッケージに内蔵するデカップリング・コンデンサ
図 パッケージに内蔵するデカップリング・コンデンサ
現在,動作周波数が1GHzを超える論理LSIでは,電圧変動を抑えるためにソケットの上部または下部などに高速応答のコンデンサを配置する方法が採られている。さらに高い動作周波数に対応するには,新たなコンデンサをパッケージに内蔵する必要がある。こうした目的に向けて,インターポーザの下部にじか付けして使うアレイ状のコンデンサ(a)や,インターポーザに内蔵する薄膜状コンデンサ(b)の研究開発が進んでいる。特に薄膜状コンデンサについては,電子部品メーカーやプリント配線基板メーカー,材料メーカーなどによる技術発表が活発化している(c,d)。
(日経エレクトロニクス2004年8月2日号より抜粋)