事故時や事故につながりそうな急加速や急減速が生じた際に,その前後の映像や走行データを記録する装置。ドライブ・レコーダーを自動車に取り付けることで,(1)事故処理の迅速化,(2)事故件数の軽減,(3)燃料代の削減,(4)次世代安全装備の開発に向けたデータの活用,という4つの大きなメリットが得られる(図)。

 ドライブ・レコーダーを取り付けておくだけで効果を得られるのが,事故処理の迅速化である。現在,タクシー事業者や運送業者では,事故処理の対応に大きな労力をかけている。事故を起こした相手と事故状況に対する説明が食い違い,裁判に発展することもしばしばある。ドライブ・レコーダーを使えば,こうした事故の状況を当事者の記憶に頼るのではなく,記録した映像を利用して客観的に判断できる。

 ドライブ・レコーダーで記録したデータを解析し,運転者への安全運転に対する教育を実施することで,事故件数や燃料代の削減にも寄与できる。運転者のブレーキのかけ方や加減速の仕方など他の運転者と比較して点数化することで,安全運転に対する意識が向上し,急加速や急減速の頻度が減るという。その結果,事故そのものの件数が減少するほか,車両の燃費が向上し,燃料代の削減につなげられる。

 ドライブ・レコーダーは,航空機に搭載されているフライト・データ・レコーダーの自動車版といえる。フライト・データ・レコーダは航空機で重大な事故が発生した場合に,その飛行記録や通信記録などのデータを記録装置に保存し,事故調査の解析に使うことを目的としている。海中などに落ちても場所を特定できるように,電波だけでなく,音波も発信する。以前はループ状にした磁気テープで記録していたが,最近はフラッシュ・メモリを採用しているという。

図 ドライブ・レコーダーの仕組みと効果
図 ドライブ・レコーダーの仕組みと効果 (日経エレクトロニクス2005年10月24日号より抜粋)