従来,表面に実装していたLSI(能動部品)や受動部品を基板の中に埋め込むことで,基板の面積を削減する技術である。表面実装の場合と比べて部品を配置する自由度が高まるため,部品間の配線の最適化により高周波特性の改善なども見込める。現在は高密度実装の要求が高い携帯電話機用に,一部の機能を切り出したモジュールとして使われることが多い。今後,LSIや薄型の受動部品,特性が向上した膜素子の埋め込みが進むことで,内蔵部品の種類が増加するだけでなく,部品の内蔵が容易になり,メイン・ボードなどの大規模な基板で使えるようになると期待されている。

 部品を内蔵する手法は,大きく3つに分かれる。(1)既存の部品を内蔵する手法,(2)薄型の部品を内蔵する手法,(3)印刷工程などにより抵抗体や誘電体でできた膜の素子を形成する手法,である。(1)の既存の部品を内蔵する手法は,内蔵できる部品に制限がなく,機器メーカーが必要とする抵抗値やコンデンサの容量などの特性を満たすことができる。チップ部品などの既存の部品を用いるため,現行の製造装置の転用も可能だ。しかし,内蔵する部品の厚さに応じて,基板自体も厚くなるという欠点がある。表面実装基板と比べて,部品を埋め込む穴を基板に開ける工程が増えるため,コストの大幅な削減には向かない。

 (2)の薄型部品を内蔵する手法は,新たに部品や材料を開発する必要があるが,基板の積層時に薄型部品の周囲の樹脂が変形して内蔵が完了するので,基板の穴は不要で既存の部品を埋め込む(1)に比べて基板を薄くできる。同じように基板の薄型化に効果がある(3)の膜素子に比べると,内蔵前に部品の特性を調べて良品だけ内蔵できるという利点がある。ただし,既存の部品と同じように部品を実装する工程は残る。

 (3)の印刷工程やスパッタなどで膜素子を形成する手法は,一括して膜素子を形成できるため,部品の実装工程を減らし,コストを削減する効果が大きい。チップ部品よりも体積が小さいため,基板面積を縮小したり基板の厚みを削減したりという効果も期待されている。ハンダの接合個所が減るので接続信頼性の向上と軽量化,環境負荷の軽減という効果もある。ハンダ自体を利用しない「ハンダ・フリー」を実現できる可能性もある。LSIに関しては,設計ルールの違いなどから(3)の方法によって基板内に造り込むことは難しいとされる。

 部品内蔵基板には,樹脂基板のほかにセラミックス基板を使ったものがある。これはLTCC(low temperature cofired ceramics)と呼ばれており,実用化されている。ただし,重くて割れやすいためメイン・ボードなどの大型の基板に適用することが難しく,1000℃前後といった高温処理が必要なので,LSIは内蔵できないなど制約がある。

図 部品内蔵の方法
図 部品内蔵の方法 (日経エレクトロニクス2003年3月3日号より抜粋)