液滴を小さい穴の開いたノズルから吐出する技術のこと。パソコン向けのプリンターでよく使われている。

 インクジェット技術は,液体の吐出方式によって2種類に分かれる。1つは「ピエゾ方式」である。電圧を加えると変形する圧電素子を使い,圧電素子にパルスを印加することにより瞬間的にインク室の液圧を高め,これによりノズルから液体を押し出す。セイコーエプソンがプリンターで採用する。

 もう1つは「サーマル方式」である。ノズルの内部にあるヒータを熱して気泡を発生させ,その気泡の圧力によってインク粒を飛ばす。小さいインク粒を飛ばす場合にはヒータを1個,大きいインク粒を飛ばす場合にはヒータを2個,それぞれオン状態にして,インク粒を飛ばす圧力を変化させる。キヤノンや米Hewlett-Packard Co.がそれぞれプリンターで採用する。なお,キヤノンは自社のインクジェット・ヘッド構造を,サーマル方式ではなく「バブルジェット方式」と呼ぶ。

 近年ではプリンターだけでなく,電子機器の製造でもインクジェット技術を用いるようになっている。例えば,金属の微粒子を噴射することで10μmを切る微細な配線を形成したり,基板の上にさまざまな材料を噴射して素子を作ったりといった用途がある。

図1 ピエゾ方式のインクジェット技術の原理
図1 ピエゾ方式のインクジェット技術の原理

図2 サーマル方式のインクジェット技術の原理
図2 サーマル方式のインクジェット技術の原理
(図1,図2とも日経エレクトロニクス1997年11月17日号より抜粋)