magnetic random access memory

 MRAMは,磁気抵抗素子とSiベースを組み合わせたメモリ(図1)。データの記憶にはハード・ディスク装置と同様に,磁化の方向を使う。磁気抵抗効果(磁化の方向で記憶素子の抵抗が異なる性質)を利用し,"0"か"1"かを判別する。不揮発性や低電圧,読み出しと書き込みの回数に制限がほとんどないといった特徴を持つ。

 MRAMの磁気抵抗素子として一般的に利用されるTMR(tunneling magnetoresistive)素子の基本構造は2つの強磁性層とその間に挟まれた絶縁層からなる(図2)。TMR膜は磁気抵抗効果を示すトンネル接合膜。HDD用ヘッドで使っているGMR(giant magnetoresistive)膜と比べて,抵抗値の変化率(MR比)が格段に大きい。このため,HDD用のヘッドに使えば感度を数倍高くでき,メモリの記憶素子に利用するとSRAM並みの性能が実現できる。

 TMR素子を"0"から"1"へ書き換える場合には,y方向に電流を流す。電流線の周りには時計回りに磁界が発生するので,電流線の真下にあるTMR素子は-x方向の磁界を受ける。この磁界により上側の強磁性層の磁化が反転し,"1"の状態になる。反対に"1"から"0"へ書き換える場合には,-y方向に電流を流せばよい。通常,下側の強磁性層は,電流の作る磁界によって磁化の向きが変化しないように設計している。

 TMR素子が複数になったときは,2本の電流線(ビット線とワード線)を使う。2本の電流線に流れる電流の大きさを調整すると,この交点にあるTMR素子のみを書き換えられる。交点以外のTMR素子は,電流が流れてもその大きさが磁化の反転に十分でないため変わらない。

 読み出しは,磁化の向きが平行のとき抵抗が小さく,反平行のとき抵抗が大きいというTMR素子の性質を使う。積層面に垂直な方向に電流を流し,TMR素子から流れ出る電流を検出する。電流の大きさで,TMR素子に記憶されているデータが"0"か"1"かを判定する。

 TMR素子が複数になった場合の読み出しには,DRAMと同様にMOSFETをスイッチとして使う。MOSFETを使って読み出したいTMR素子を選択し,そのTMR素子にだけ電流を流す。あとは,選んだTMR素子から流出する電流の大きさでデータを読み出す。

各種メモリの動作原理
図1 各種メモリの動作原理
2001年2月12日号より抜粋)

TMR素子を使った書き換えと読み出しの原理
図2 TMR素子を使った書き換えと読み出しの原理
2001年2月12日号より抜粋)