2014年3月に開催した日経BP社主催セミナー「世界半導体サミット@東京 ~IoT時代の半導体成長戦略~」から、ルネサス エレクトロニクス 執行役員常務 大村隆司氏の講演を日経BP半導体リサーチがまとめた。3回連載の第2回である今回は、IoT社会における賢いクルマの姿である。第1回はこちら。(日経BP半導体リサーチ)

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IoT社会における賢いクルマ


 IoTの世界で最も進化するのは、クルマではないだろうか。次世代のクルマは賢いクルマであり、制御とITの連動が賢さの秘訣である(図1)。(1)クラウド(IT)情報をハンドリングして、(2)人や物体をリアルタイムで認識し、(3)走る・曲がる・止まるという制御を行う。この3点が連動して、初めて賢いクルマになる。

 この3点に関してルネサスにはどんな技術があり、これからどのように世の中が展開していくのかを紹介しよう。

図1 IoT社会における賢いクルマ
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(1)クラウド(IT)情報:利便性を高める


 今のクルマには、スマートフォンとの連携や、ナビゲーションによるレストラン案内など、さまざまなサービスが導入されている(図2)。例えば、行きたい場所を話し掛ければ、ナビゲーションがその場所をセットして案内が始まる。自分がどこを運転しているのか、家にいる家族も知ることができる。このように非常にインテリジェント化・IT化されている。しかし、これにとどまらず、もっと付加価値が上がっていくだろう。

図2 クルマのIT化(利便性)
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 例えば、これからのクルマはエンターテインメント化されていく。映画館になったり、ゲームやカラオケができたりといった盛り上がるコンテンツが、利便性という意味では必要になっていく。最近は若者がなかなか車に乗らないと聞く。「便利ではあるが、楽しみがない」ことが理由だといわれる。クルマがエンターテインメント化されると、こうした状況が変わるであろう。

 最近は新しいサービスとして、保険がある。安全運転をしている人は「保険料が高い」と感じるものだが、そういう人には安くし、逆に危険な運転をしている人には高くすることが、一つのサービスになる。そこで、運転者をモニタリングし、安全運転をしているか否かを判断し、保険料を決める。既にこのサービスは始まっている。日本ではなじみがないが、欧米では急速に浸透している。

 クルマのIT化で分かりやすい例は、災害情報マップである。自動車メーカーやカーナビメーカーなどが連携し、災害があったときにどの道路が使えてどこが不通なのかを地図に表示するサービスだ。例えば、パイオニアの「スマートループ アイ」は、クルマに付いている多くのカメラから得る情報を、ユーザー感で共有するサービスである。渋滞情報や、行きたい場所がどのような状況にあるかを、リアルタイムで画像で確認できる。