左から、ディレクターのアントン・ベルトラン氏、シニアバイスプレジデントのホゼ・マリア・ロピス氏、エリアマネジャーのミハエル・チョスケ氏(出所:日経BP)
左から、ディレクターのアントン・ベルトラン氏、シニアバイスプレジデントのホゼ・マリア・ロピス氏、エリアマネジャーのミハエル・チョスケ氏(出所:日経BP)
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ドイツのIBC SOLAR社は1982年に創業し、太陽光発電のシステムインテグレーター(SI)、メガソーラー(大規模太陽光発電所)のEPC(設計・調達・施工)サービスを世界各地で展開し、これまでの2.5GWを手掛けた実績がある。今年5月に日本市場への本格進出を決め、すでにメガソーラー建設計画を公表した(関連記事)。プロジェクト事業部門シニアバイスプレジデントのホゼ・マリア・ロピス氏に日本市場の戦略を聞いた。

――日本に本格進出することなった経緯を教えてほしい。

ロピス 2013年から日本に駐在員を置き、プロジェクト開発を進めつつ、本格的に進出すべきかどうか、検討してきた。先行して進めてきた3つのメガソーラープロジェクトも成約に至り、その経験を通じて、日本でのメガソーラーの事業環境などを分析した。その結果、世界戦略上、最も重視すべき国の1つと判断した。

――固定価格買取制度(FIT)の買取価格は、当初の40円/kWhから今年度は32円/kWhに下がり、国内EPCサービス会社の中には、「32円案件」は手を出さないという声も聞きます。

ロピス  FITの買取価格が下がっていくことは、通常の「進化」であり、すでに我々はドイツなどで経験してきた。ドイツのFITでは、当初0.5ユーロ(約68円)/kWhだった買取価格が、最終的に0.13~14ユーロ(約18~19円)/kWhに下がった。スペインのFITでも、当初の0.45ユーロ(約61円)/kWhから0.11~0.12ユーロ(約15~16円)/kWhになった。それでも我々は、プロジェクトコストの削減に取り組み、いまでも利益を出している。日本での32円/kWhの買取価格は、十分に事業性を確保できる水準だ。日本の経産省の判断は、非常に賢明だったと思う。

――ドイツでは、どのように大幅なコスト削減を実現してきたのか。

ロピス 3つのポイントを指摘したい。再生可能エネルギー事業は社会的事業であり、誰かが大儲けしてはいけない。関係者それぞれが適正な利益を得ることをまず挙げたい。2つ目はそうした視点から、ファイナンスセクターが適切な利幅で資金提供すること。そして最後に、システム資材のコストを下げることだ。

 システム資材のコスト削減で重要なことは、「品質を下げてコストを削減する」という間違ったアプローチを採らないこと。買取価格の低下とともに、発電システムの品質を下げてしまうと投資家が問題視し、ファイナンスが止まってしまう。

――では、品質を維持しつつ、いかにシステムコストを下げたのですか?

ロピス 採用するシステム資材は、世界中のサプライヤーから調達している。ドイツ国内で製造しているものはほとんどない。太陽光パネルについては、独自に品質基準を作り、海外メーカーに生産委託したIBC SOLARブランド品を使っている。パワーコンディショナー(PCS)や架台については、ドイツメーカーが中国などで製造した製品を採用することが多い。ドイツのサプライヤーは、「ドイツ品質」を維持しながら海外生産によってコストを下げてきた。

――日本のメガソーラー建設でも、同じようなコスト削減が可能ですか?

ロピス 日本で3つのメガソーラー建設を手掛けて分かった問題点は、地場の事業者による土木工事の費用が非常に高いこと。そこで、こうした事業者を交え、「なぜ、こんなに高いコストになるのか」、何度も議論した。ドイツでは、工期の短縮など、建設会社といっしょに努力し、土木工事のコストも下げてきた。こうした経験も話し、最終的には、当初の半分以下のコストになった。

 日本企業と連携し、ドイツで経験したコスト削減のノウハウを提供することで、日本市場のコスト構造を変革できると思う。