「International Display Workshop(IDW '13)」(では、有機EL(OLED)に関する多くの最新技術が発表される一方で、産業的には液晶の優位性がまだ続く気配を感じさせる内容も多かった(Tech-On!関連記事1)。そのような中で、今回の会議では、有機EL開発の方向を大きく変える可能性を持つ「量子ドット」に関して集中的なセッションが組まれた。有機ELの有機発光層に代えて、量子ドット層を印刷で形成した「QLED(quantum-dot light emitting diode)」である。「自発光で薄型化が容易である」という有機ELの特徴をそのまま受け継ぎ、さらに量子ドット層をはじめとした各層を印刷で形成できるため、製造プロセスの簡略化にもなる。
QLEDの講演が相次ぎ、有機ELとの比較も
会期2日目の「MEET(MEMS and Emerging Technology for Future Display and Devices)」セッションでは、午前の「MEET2」で、米QD Vision社、韓国Seoul National University、静岡大学、韓国Samsung Advanced Institute of Technology(SAIT)からの4件、および午後の「MEET3」では、韓国Kyung Hee UniversityでProfessorを務めるJin Jang氏、QD Vision社、東京大学からの3件の講演があった。この内、午前の4件と午後の1件目の講演までの計5件がQLEDに関する内容である。MEET3の2番目のQD Vision社による発表内容は液晶パネルのバックライトへの応用であり、MEET3の最後の講演は東京大学のドレスト光子に関するレビューである。また、このMEETセッション以外にも、3日目の「FMC(FPD Manufacturing, Materials and Components)」の8セッションで、米3M社から液晶パネルのバックライトへの応用に関する講演もあった。
MEET2セッションの最初の講演者であるQD Vision社のSeth Coe-Sullivan氏(写真1)は、最初に量子ドットの二つのモードを紹介した。光で量子ドットを励起し、波長変換した光を放出させるフォトルミネッセンス(PLモード)と電気エネルギーで量子ドットを励起し発光させるエレクトルミネッセンス(ELモード)である。これまでQD Vision社が液晶ディスプレイ用途に実用化してきた量子ドットのモードは前者である(同 関連記事2、同 関連記事3)。今回、後者のELモードを使った自発光型のディスプレイ技術を紹介した。有機ELの発光層の代わりに量子ドットを印刷で形成することでフルカラーの「AM-QLED」(アクティブ・マトリクス駆動のQLED)ができることを示した。