20回目の節目を迎えた「International Display Workshop(IDW '13)」(では、最先端技術の発表と共に、ディスプレイ開発のこれまでの歩みを整理し、将来の方向を議論する企画が組まれた。このような視点は、現在のフラットパネル・ディスプレイ技術の立ち位置を明確にすると共に、未来に向けた方向を改めて見直す良い機会である。特に、今回は液晶と比較して有機ELの発展に疑問を投げかける発言もちらほら聞こえてきたが、ディスプレイ技術の原点に立って考えることで、将来の解も見えてくるのではないだろうかと感じた。
技術開発20年の重み
初日の「Plenary Sessions」で「第20周年記念講演」を行った東京理科大学 教授の小林駿介氏は、1994年の第1回会議で発表されたセイコーエプソン(当時)の大島弘之氏の低温多結晶Si(LTPS)の発表内容の紹介を皮切りに、今日のディスプレイを支えているキーとなった技術を順次紹介し、その技術がどのような形で花開いてきたかを示した。この内容は、会場内の「20周年記念展示」の会場にも展示された(図1~図8、展示内容は一部割愛)。
これらの内容は、現在主流となっている液晶ディスプレイの表示性能を向上させた業績が多く、これらの研究がなければ、現在の液晶ディスプレイも存在しなかったであろう。また、現在の多くの研究者が精力的に開発に打ち込んでいる有機ELや酸化物半導体TFTのスタートとなる論文もあり、今後液晶ディスプレイと同様に大きく花開くことを期待する。
部品・材料が支えてきたディスプレイの「Past, Present, and Future」
「FPD Manufacturing, Materials and Components」のワークショップ「FMC1」および「FMC2」では、20回記念として、表題の「Past, Present, and Future」テーマのもとで、これまでのFPD技術の進歩を支えてきた主要な部品・材料であるフォトレジスト(英AZ Electronic Materials社、FMC1-2)、カラー・フィルタ(大日本印刷、FMC1-3)、フォトマスク(HOYA、FMC1-4)、偏光板(日東電工、FMC2-1)、光学フィルム(日本ゼオン、FMC2-2)、バックライト(米Global Optical Solutions社とオムロン、FMC2-3)、そしてプラスチック・フィルムのガス透過(明治大学、FMC2-4)に関する講演が行われた。この20年間、これらの材料がどのように進歩し、ディスプレイ技術にどう貢献してきたのかを振り返ることによって、今後さらにディスプレイ技術が発展していくために必要なポイントが見えてくる内容であった。
例えば、ディスプレイがこの20年間ずっと進めてきた「大画面化」「高精細化」と同時に、TFT回路を形成するためのカギとなるフォトマスクに関しては、マスクの大型化と共にマスクパターンの高精度化が追求され、さらに工程削減のためのマルチトーン・マスクが実用化されてきた。微細なパターンを確実に形成するために重要なフォトレジストについては、微細パターンを均一に形成するためのレジスト材料の改良や、i線露光からg線、h線露光への移行に対応した材料の最適化やレジスト感度の向上などが継続的に進められてきた。さらに、今後も続くとみられる「高精細化」に対しては、ファンクショナル・マスクなどのソリューションが提示された。
その他の主要部材であるカラー・フィルタ、光学フィルタ、バックライトなど一通りの講演を聞いたが、これらすべての材料の進歩があったからこそ、現在の大画面・高精細の液晶ディスプレイを実現できたことを十分に納得させられる内容であった。ディスプレイは、部品・材料などの産業インフラに支えられた産業であることを再認識させるのに十分な企画であったと思う。