【図1】MREALの利用イメージ 。自動車はCGによってHMDで表示している。
【図1】MREALの利用イメージ 。自動車はCGによってHMDで表示している。
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【図2】HMDを装着したところ。壁、床のマーカーによりユーザーの位置、視線を判断する。
【図2】HMDを装着したところ。壁、床のマーカーによりユーザーの位置、視線を判断する。
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【図3】HMDに表示された日本列島の地殻構造。
【図3】HMDに表示された日本列島の地殻構造。
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 電通国際情報サービス(ISID)は2013年3月6日、キヤノンIT ソリューションズと販売パートナー契約を締結し、キヤノンが開発したMR(Mixed Reality:複合現実感)システム「MREAL」(Tech-On!関連記事)の販売を開始した(ニュースリリース)。これに先駆け同社は、東北大学地震・噴火予知研究観測センターにおいてMREALを導入したことも明らかにした。同センターでは、地震や火山噴火のメカニズム解明に向けた観測データの表示ツールとしてMREALを活用する。

 MREAL は、ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)、対象物の3D データと映像データを融合させるソフトウエア、HMD の位置情報をトラッキングするセンサから構成される。HMD に装着された左右一対のカメラで周囲の映像を撮影し、HMD上に周囲の映像と対象物の3D データを融合したCG を表示する。ユーザーの姿勢や動きに応じてCGの表示内容が変化するため、ユーザーは目の前に対象物があるかのような感覚を体験できる。対象物の裏側、内部など、通常目視できない部分もバーチャルに見ることも可能で、HMD ごとに位置情報が測定されるため、1つの対象物を複数人が同時にいろいろな角度から見ることもできる。

 製造業における活用としては、設計の初期段階で作成した製品の3D データを用いて臨場感のあるデザインレビュー(デザインや操作性の評価)を行ったり、CAEによる解析結果などのCGを簡易的な製品モックアップに重ね合わせて結果を評価したりする。生産設備を配置する前の工場内で、製造設備のCGを表示することで製造ラインの組み替え案を検討することも考えられる。

 製造業以外でも、さまざまな分野の研究成果を分かりやすく、視覚的に表示するツールとして利用できる。例えば、化石や建造物などの画像を電子データとして保存し、MREALで表示することで、実物を傷付けない、バーチャルな鑑賞が可能となる。気象データや災害シミュレーション結果と都市の3D データを組み合わせることで、災害発生時の被害状況予測や避難経路の確認が視覚的に可能になるなど、災害に強い都市計画などでの活用も期待されている。