Qualcomm社が2011年10月に米国サンノゼ市で披露した、受電器を送電器から数cm離してもよいことを示すWiPower技術のデモ。
Qualcomm社が2011年10月に米国サンノゼ市で披露した、受電器を送電器から数cm離してもよいことを示すWiPower技術のデモ。
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 韓国Samsung Electronics社と米Qualcomm社は2012年5月7日、ワイヤレス給電技術の業界団体「Alliance for Wireless Power(A4WP)」を設立したと発表した。電力の送電器に対する受電器の位置自由度が高く、自動車や卓上機器への給電、そして複数の機器への同時給電ができるワイヤレス給電技術を推進していくとする。

 最近になって、ワイヤレス給電技術の業界標準を目指す競争が激しくなってきている(日経エレクトロニクスの2011月28日号の特集「ワイヤレス給電、制するのは誰か」参照)。2011年は、「Qi」規格準拠の電磁誘導方式に基づくワイヤレス給電技術を実装した製品が多数登場した。Qi規格は、2008年に発足したワイヤレス給電の業界団体「Wireless Power Consortium(WPC)」が策定した規格である。

 一方、Qualcomm社は、磁界共鳴方式の「WiPower」を、Qi規格への対抗技術として推進していく姿勢だった。「WiPowerの方が、送電器と受電器間の距離をより大きくとれるという技術的メリットがある」(Qualcomm社)。今回、A4WPは、技術的な詳細について明らかにしていないが、Quacomm社はWiPowerを「A4WPにとって理想的な技術」と位置付けている。

 また、Samsung Electronics社はWPCに参加する一方で、磁界共鳴方式のワイヤレス給電技術を実装した3Dメガネ用充電器を2011年1月に発売するなど、独自の技術開発を進めていた(前述の特集に分解記事)。同社は2011年10月時点で既に、「磁界共鳴方式は、デバイスの位置自由度が高く、しかも複数の端末への同時給電ができる点でより応用範囲が広い」と述べていた。

 WPCも最近になって磁界共鳴方式を仕様の一つに採用しつつある(関連記事)。しかし、Qualcomm社陣営を取り込むには間に合わなかったようだ。