報道陣からの質問に答える、シャープ 代表取締役社長の片山幹雄氏
報道陣からの質問に答える、シャープ 代表取締役社長の片山幹雄氏
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亀山第2工場の生産能力と生産品目に関するシャープの見通し。「実際の販売計画に基づいて作成した」(片山氏)という。
亀山第2工場の生産能力と生産品目に関するシャープの見通し。「実際の販売計画に基づいて作成した」(片山氏)という。
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堺工場の生産能力と生産品目に関するシャープの見通し。
堺工場の生産能力と生産品目に関するシャープの見通し。
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 シャープ 代表取締役社長の片山幹雄氏は、2月1日に同社が都内で開催した決算発表会に登壇し、2011年度第1~3四半期の業績と今後の業績改善策について、報道陣からの質問に答えた(Tech-On!関連記事1)。主な質疑応答の内容は以下の通りである。

 (2011年度第3四半期に赤字になった)液晶テレビ事業の黒字回復はいつになるか。

 液晶テレビ事業は2011年度第2四半期末までは黒字だったが、第3四半期に赤字となり、第4四半期も赤字になる見通しだ。2011年度通期でも赤字になる。最大の要因は国内需要の急減にあり、業績回復のポイントも国内での黒字化にある。これについては今後、相当早い時期に実現するつもりであり、液晶テレビ事業全体でも2012年度に黒字化したい。

 亀山工場と堺工場における液晶パネル生産ラインの稼働状況を聞きたい。

 亀山第2工場における(大型液晶テレビ用パネルの生産ラインの)稼働率を2011年12月から低下させている。今後、同工場では中小型パネルへの生産シフトを進め、これに伴ってラインの稼働率の低下を抑えられる。これは従来の計画通りである。同工場での大型液晶テレビ用パネルの生産を縮小することで、液晶パネル事業の赤字を解消していけるだろう。亀山第1工場では、スマートフォン向けCGシリコンTFTパネルの量産出荷を2012年夏までに開始する考えだ。

 堺工場については、大型液晶テレビ用パネルの生産ラインをフル稼働させると、400万~500万台分のパネルが取れる。このうち自社製品に振り向けられるのは半分程度である。外販比率が10%程度にまで落ちていることを考えると、生産ラインの稼働率を落とさざるを得ない。当面、同ラインの稼働率を現状の約1/2に下げる。この稼働率の低下を利用して、(酸化物半導体TFTを用いた)IGZOパネルの生産技術を(亀山第2工場に加えて)堺工場にも導入することを検討している。

 IGZOパネルについては、亀山第2工場での量産立ち上げが当初の計画よりも2カ月遅れたことを本日の決算発表で明らかにした(Tech-On!関連記事2)。遅延の理由は何か。

 IGZOパネルの生産そのものに問題があるわけではない。最終製品への組み込みに際して、当初の計画よりも遅れを生じてしまった。ただし、2012年2月中には量産出荷を始める。

 IGZOパネルに関しては、当初はスマートフォンやタブレット端末をターゲットにしていたが、もう少し画面寸法の大きい用途にも展開できそうだ。具体的には、高精細なディスプレイを搭載する、ノート・パソコンや(デスクトップ・パソコン用などの)モニターに向けた引き合いが出てきている。中小型パネルについては、IGZOパネルを強みにできる限り早く事業規模を拡大させる考えだ。

 韓国メーカーが、有機ELパネルを搭載した大型テレビの製品化に打って出る。こうした動きにどう対抗していくか。

 液晶テレビは激しい価格下落に見舞われており、いかに付加価値を高めて価格を回復できるかが大きな課題だ。これは難しい課題であり、シャープにとって、有機ELパネルがそれに応える解になるかどうかはまだ分からない。我々としては今、韓国メーカーとの勝ち負けを考えている状況にはなく、(液晶テレビ事業については)ニッチかもしれないが、60型以上のハイエンド品を世界に売って歩くしか道はない。

 (32型といった)コモディティ化した画面寸法の液晶テレビで大きな利益を上げることは、もはや世界中のどのメーカーにもできなくなっている。異常なまでの価格下落を招いてしまった結果だ。ただし、薄型テレビの需要は今後も残り続ける。薄型テレビの需要が一巡した今、新たなテレビ市場をいかにして立ち上げ、そこに付加価値を生み出していくかが課題になる。停滞した市場環境にとどまっているわけにはいかない。

 (足元で赤字の)太陽電池事業については、黒字化に向けてどのような施策を打っていくか。

 太陽電池については、赤字のほとんどすべてが海外市場におけるものだ。国内ではわずかながら黒字である。特に、(太陽電池の主要市場だった)欧州で販売単価が40%も下落し、為替の影響を含めると我々の販売価格は約1/2に落ち込んだ。欧州市場が金融不安の影響で消えた影響は大きい。今後、こうした海外市場での赤字を解消しない限り、事業の黒字化は望めない。

 国内で太陽電池を生産し、海外へ輸出するモデルはもはや採算が取れなくなっている。海外生産をベースにする「地産地消」を徹底していく。その準備を着々と進めており、(既に海外生産を行っている結晶Si系太陽電池に加えて)2011年12月にイタリアの薄膜Si系太陽電池の生産ラインで出荷を開始した。さらに今後は、発電など川下の事業を積極的に取り込んでいく。国内では(電力の全量買い取りが始まる)2012年7月以降の需要回復を見込んでいる。事業全体として、2012年度に黒字化したい。