[画像のクリックで拡大表示]

 「国内液晶テレビの2011年末売り上げの落ち込みが予想以上だった」。シャープは2012年2月1日、2012年3月期第3四半期決算を発表した(決算資料)。2011年4月~12月累計の連結業績は、売上高が前年同期比18.3%減(4257億円減)の1兆9036億7700万円、営業利益が同86.3%減(573億円減)の91億3700万円の減収減益だった。「国内液晶テレビの想定以上の急激な市場悪化」「グローバル需給の悪化による大型液晶パネルの外販減少」「国内携帯電話機の販売減」「市場環境悪化による太陽電池の売り上げ低迷」の四つが売上高の減少の原因だという。売上高の減少に伴って、営業利益も落ち込んだ。

 経常損益は29億1800万円の赤字、純損益は2135億100万円の大幅な赤字だった。純損益の赤字がふくらんだのは、大型液晶操業損失や事業構造改革費用などで809億円の特別損失、繰延税金資産の見直しで1152億円の法人税等調整額を計上したためである。

金額ベースで前年のわずか2割台

 部門別では、液晶テレビや携帯電話機を含む「AV・通信機器」の2011年4月~12月累計の売上高が前年同期比25.4%減(2902億円減)の8512億円、営業利益が同69.1%減(254億円減)の113億円だった。液晶テレビの第3四半期単独の売上高は同45.6%減の1556億円、販売台数は同37.4%減の321万台。「国内の液晶テレビの2011年末の売り上げは、事前には前年の60~70%になると予想されていた。しかし実際には、10~12月の売り上げは台数ベースで前年同期の30%台、金額ベースではわずか20%台にまで落ち込んだ」(シャープ 取締役社長の片山幹雄氏)。海外では北米を中心に60型以上の大型液晶テレビが堅調だったが、国内の不振をカバーすることはできなかった。

 ほかのエレクトロニクス機器では、LED照明機器や空気清浄機などを含む「健康・環境機器」が売上高2204億円(前年同期比9.6%増、192億円増)、営業利益236億円(同62.8%増、91億円増)、カラー複合機などを含む「情報機器」が売上高2023億円(同0.7%増、13億円増)、営業利益208億円(同45.7%増、65億円増)と好調だった。前年同期はAV・通信機器がエレクトロニクス機器全体の営業利益の半分以上を稼ぎ出していたが、いまや健康・環境機器や情報機器の方が営業利益で上回っている。

液晶パネルの外販も壊滅状態

 電子部品も総崩れだ。まず、液晶パネルの2011年4月~12月累計では、売上高が5830億円(前年同期比25.5%減、1994億円減)、営業損益が137億円の赤字(同197億円減)。海外での液晶テレビの需要減少から、堺工場で生産する大型液晶パネルの外販比率は従来の約3割から現在は約1割まで落ち込んでいるという。中小型液晶パネルも、顧客メーカーのスマートフォンの売り上げ減少や亀山第2工場のIGZO液晶パネルの量産出荷が約2カ月遅れたことなどが響いた。これらにより、大型液晶パネルの在庫評価減と亀山第2工場の操業損が発生し、営業利益を押し下げた。

 太陽電池は、売上高が1594億円(前年同期比21.6%減、440億円減)、営業損益が147億円の赤字(同191億円減)である。欧州での金融不安の影響、各国の制度見直しによる需要減退、価格の下落、円高などにより、海外での売り上げが減少した。ただし「太陽電池は足元では問題があるが、今後、全世界的にエネルギーが不足するのは明らかだ」(片山氏)。同氏は「太陽電池事業は、時間が掛かっても成長ラインに載せていきたい」と、液晶テレビ事業に代わる柱にする決意を述べた。

 なお、同社は2012年3月期通期業績の下方修正も発表した。売上高を、前回予想の2兆8000億円から2500億円減の2兆5500億円、営業利益を前回予想の850億円から0円に修正した。